公営墓地の原状回復はどこまで?墓じまいの撤去範囲を31例で比較

大久保亮佑

執筆・編集: 大久保亮佑株式会社Kogera代表生前整理アドバイザー2級

更新日: 2026年9月8日

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公営墓地の原状回復はどこまで?|撤去範囲を具体的に公表している運営主体は31件中9件

公営墓地の原状回復は、墓石だけでなくカロート・基礎などの地下構造物まで撤去して更地に戻すのが原則です。ただし、その範囲を具体的に公表している運営主体は、条例・公式資料を実査した31件のうち9件(29%)にとどまります。

残る21件は「原状に回復する」「更地にする」とだけ定めています。同じ言葉でも、川崎市はカロート底面から30cm掘り下げて職員立会いで確認し、相模原市は市が設置したカロートを残すよう求める。この差が、石材店の見積もりの前提をそのまま変えます。どこまで戻すのかを先に確かめる、その順序を実査データで整理します。

要点: 31例の実査で分かったこと(一覧表)

当サイトは、市営・町営・都立の公営墓地31運営主体(墓園・墓地として172か所)の条例・施行規則・公式ページを読み比べ、返還時の原状回復について何が書かれているかを1件ずつ確かめました(最終確認 2026年9月3日)。

公営墓地31運営主体の原状回復の定め(2026年9月3日時点)
確認項目実査の結果見積もりへの影響
撤去範囲の具体的な指定(地下構造物・巻石・掘り下げ深さ等)あり9件(29%)/「原状回復」「更地」とのみ21件/原状回復の定め自体が公式記載なし1地下構造物まで撤去するかで工事の内容が変わる。指定がない墓地は管理者への確認が前提
撤去前後の写真の提出求める9撮影を石材店が担うかを契約前に決める
完了検査・職員立会い・更地証明あり10検査で残置物が見つかると手戻りになる。工程に検査日を組み込む
石材業者の指定「指定なし」と明記10件/公式記載なし21指定がなければ、同じ撤去仕様を複数社に渡して見積もりを比べられる
現状のまま返還できる例外高砂市(市長の承認)・千葉市(市長が認める場合。還付額は下がる)・都立霊園(知事が特別の事情を認めるとき)例外の適用には申請と承認が要る。原則は原状回復

件数はすべて、各自治体の公式ページ・例規・公式様式で確認できた内容だけを数えています。写真の提出や検査を「求めていない」と読める記述があったわけではなく、記載が見当たらなかった墓地は「記載なし」として数から外しました。

「原状回復」には3つの段階がある

条文を読み比べると、同じ「原状回復」でも書かれている深さが3段階に分かれます。

  1. 撤去範囲まで具体的に指定している9件)。カロート・基礎などの地下構造物をどうするか、巻石や囲いを残せるか、どこまで掘り下げるか、が公式資料に書かれている。
  2. 「原状に回復する」「更地にする」とだけ定めている21件)。義務はあるが、範囲の仕様は条例・規則・公式ページのどこにも見当たらない。実査した中でいちばん多い型です。
  3. 原状回復の定め自体が公式資料に見当たらない1件)。大阪市・大阪市設霊園は、返還の案内はあるものの、更地化の範囲や仕様を確認できませんでした。

どの段階に当たるかで、石材店に渡せる情報の量が変わります。1段階目なら公式の仕様書をそのまま渡せる。2段階目・3段階目は、管理窓口に聞いた内容を自分で書き取って渡すことになります。

撤去範囲を公表している9運営主体の内容

撤去範囲を具体的に示している9運営主体の内容を並べます。「更地に戻す」の中身が墓地ごとにどれだけ違うかが、この表でいちばんよく分かります。

撤去範囲を具体的に公表している公営墓地9運営主体(2026年9月3日時点)
墓地公表されている撤去範囲写真の提出検査・立会い石材業者の指定
明石市・石ケ谷墓園カロート・基礎などの地下構造物をすべて撤去。良質土で埋め戻し、表層5cmを真砂土で敷きならす施工前・地下構造物の撤去中・施工後の写真記載なし指定なし
神戸市・神戸市立墓園墓石等を撤去して更地に。基礎撤去後はセメント・モルタルで崩壊防止の措置施工場所確認書(写真添付)と完成写真台紙記載なし指定なし
福岡市・福岡市立霊園カロートを含む構造物をすべて撤去し、盛土等で仕上げ。工程ごとの写真を提出解体工事の写真5点を返還届に添付工事完了届の提出後に検査。更地の確認を事前に受ける公式記載なし
北九州市・北九州市立霊園コンクリート基礎を撤去して使用前と同じ更地に。土中の骨壷を十分に掘り返す竣工届に写真を添付記載なし指定なし
京都市・京都市営墓地墓石・巻石・植込みなどの工作物を撤去し、原則更地。植栽や木の根も残せない記載なし終了届の提出後に担当が現地確認。残置物があれば連絡公式記載なし
川崎市・川崎市営霊園墓碑・囲い・カロート等すべてを撤去。カロート底面から30cm掘り下げ、職員立会いで遺留物がないことを確認記載なし職員立会いで遺留物がないことを確認公式記載なし
岡山市・岡山市営墓地墓石・囲い・お骨のすべてを撤去して従前の形態に戻す(困るときは事前相談)記載なし記載なし指定なし
堺市・堺市霊園墓石等(巻石・盛土を含む)をすべて撤去記載なし記載なし公式記載なし
相模原市・相模原市営霊園墳墓等を撤去。ただし市が設置したカロート等は撤去しない記載なし工事完了届の提出後に管理事務所の検査指定なし

読み方を3つ添えます。まず、地下構造物の扱い。明石市・福岡市・北九州市・川崎市は地下のカロートや基礎まで撤去する側に振れていて、北九州市は「土中に骨壷が埋まったままのケースが散見される」として掘り返しまで求めています。次に、隣接区画への配慮。神戸市は基礎を撤去したあとにセメントやモルタルで面が崩れないよう措置をとることを求め、傾斜地で撤去範囲が分かりにくい場合は事前相談を案内しています。最後に、撤去しないものの指定。相模原市は市が設置したカロート等を撤去しないよう明記しており、「全部取れば安心」ではありません。京都市は巻石も植栽の根も残せない一方で、全撤去すると現地に不具合が出そうな場合は申請前に相談するよう案内しています。

「原状回復」とのみ定める21運営主体で起きること

21運営主体は、条例か公式ページに原状回復の義務を置きながら、範囲の仕様を公表していません。該当するのは稲美町・奥ノ池墓地高砂市・高砂市公園墓地加古川市・日光山墓園都立霊園横浜市・横浜市営墓地札幌市・札幌市営霊園名古屋市・八事霊園・愛宕霊園名古屋市・名古屋市みどりが丘公園墓地広島市・広島市営墓地仙台市・仙台市営墓地長崎市・長崎市有墓地鹿児島市・鹿児島市営墓地下関市・下関市営墓地・霊園高知市・高知市有墓地千葉市・千葉市営霊園さいたま市・さいたま市営墓地浜松市・浜松市営墓所新潟市・新潟市営墓地静岡市・静岡市営墓地熊本市・熊本市営墓地宇都宮市・宇都宮市営墓園です。

範囲が書かれていない墓地で起きやすいのは、業者ごとに見積もりの前提がずれることです。A社はカロート撤去込み、B社は墓石のみ、という金額を並べても比較になりません。仙台市営墓地のように、更地かどうかの判定を墓園管理事務所が行い、更地証明を受けてから廃止届を出す運用では、判定基準を先に聞いておかないと工事のやり直しになります。岡山市営墓地は「撤去範囲についてお困りの際は事前にご相談ください」と案内しており、聞けば答えが返ってくる前提の運用です。

聞くときの言い方は「どこまで撤去して返還すればよいか」で足ります。地下のカロート・基礎、外柵・巻石、盛土、植栽、の4点について「残してよいか、撤去か」を聞き、答えをメモに残して石材店へ渡す。この手順で、見積もりの範囲が揃います。

写真・完了検査・立会いの定め

撤去範囲と並んで工程を左右するのが、写真と検査です。写真の提出を求めていたのは9運営主体、完了検査・職員立会い・更地証明を経る運用は10運営主体でした。

写真は撮り直しがききません。福岡市立霊園はカロート撤去前・構造物撤去後・ガレキ撤去後・盛土完了後を含む5点を求めるため、工事の途中で石材店が撮影する段取りが要ります。検査・立会いの定めは次のとおりです。

川崎市営霊園は、カロート底面から30cm掘り下げた状態で職員が立ち会い、遺留物がないことを確認します。京都市営墓地は終了届の提出後に担当者が現地を確認し、残置物があれば連絡が来る。検査を通らなければ返還が完了しないため、検査日を工程の最後に入れておきます。

原状回復の例外(現状のまま返還できる場合)

原状回復をせずに返せる例外を条例に置いている墓地もあります。高砂市公園墓地は市長の承認を得た場合に限り現状のまま返還でき、千葉市営霊園も市長が認める場合に限り現状のまま返還できます。ただし千葉市では、原状に復したかどうかで使用料の還付額が変わり、現状のまま返した場合の単価は原状に復した場合より低く定められています。都立霊園の条例にも、特別の事情があると知事が認めるときの例外規定があります。

いずれも申請と承認が前提で、原則は原状回復です。「隣の区画と外柵を共有していて撤去できない」といった事情がある場合は、この例外規定の有無を管理窓口に聞くのが先になります。

撤去範囲で費用は何が変わるか

このページでは相場の金額を書きません。同じ「更地に戻す」でも、地下構造物まで撤去する墓地と墓石だけの墓地では工事の中身が違い、相場の一言では自分のケースに当てはまらないからです。金額の目安と見積もりの見方は墓石の撤去費用の記事に、条件を入れた概算は費用シミュレーターに分けています。ここでは、撤去範囲が見積もりのどの項目を動かすかだけを示します。

  • 地下構造物の撤去:カロート・基礎の解体は、㎡単価に含む石材店と別途の石材店があります。公式資料が地下構造物の撤去を求めている墓地では、この項目が必ず見積もりに入ります。
  • 掘り下げと埋戻し:川崎市のように掘り下げの深さが決まっている墓地、明石市のように埋戻し材と表層の仕上げが決まっている墓地では、残土処分と埋戻し材の費用が固定で発生します。
  • 巻石・外柵・植栽:京都市や堺市のように巻石まで撤去する墓地では外柵の解体が加わり、植栽の抜根が要る墓地では別途の作業になります。
  • 写真・検査の対応:撮影と完了届の提出を石材店が担うかどうかで、契約に含む作業の範囲が変わります。
  • 隣接区画への措置:神戸市のように撤去後の面が崩れないようセメント・モルタルで措置をとる墓地では、その材料と手間が加わります。

石材業者の指定は、実査した31件のうち「指定なし」と明記していたのが10件、公式に記載が見当たらなかったのが21件でした。指定がない墓地では、管理者の仕様を同じ条件で複数社に渡して比べられます。

見積もりの前に確認する順序

  1. 墓地管理窓口に、返還時の撤去範囲を聞く。地下構造物・外柵や巻石・盛土・植栽の4点について「残してよいか、撤去か」。公式の仕様書があれば入手する。
  2. 写真と検査の要否を聞く。撮影する場面(着工前・地下構造物の撤去中・完了後)と、完了検査・立会いの申込み方法。
  3. 工事の届出の期限を聞く。神戸市は施工の7日前まで、相模原市は着手の7日前まで、京都市は申請後おおむね1週間で許可。届出の様式は公営墓地の返還手続きの比較と各墓地のページで確認できる。
  4. 聞いた内容を書面にして、複数の石材店に同じものを渡す。見積もりに地下構造物の撤去・残土処分・埋戻し・写真・完了届が含まれるかを確認する。
  5. 遺骨の移転先と改葬許可を先に済ませる。改葬許可は遺骨のある墓地の所在市区町村に申請する。窓口と必要書類は改葬許可(自治体別)データベースで調べられる。

順序を入れ替えると、工事の途中で「そこまでは要らなかった」「そこは残せなかった」が起きます。管理者の仕様を最初に取る。それだけで、あとの工程はほぼ一本道です。

よくある質問

回答はすべて、当サイトが公営墓地31運営主体について条例・施行規則・公式ページを実査した内容と、その集計だけで書いています。公式に記載がない項目は「記載なし」とそのまま答えています。

公営墓地の墓じまいで求められる「原状回復」とは、何をすることですか?

墓石などの工作物を撤去し、使用する前の状態(更地)に戻して返還することです。当サイトが条例・施行規則・公式資料を実査した公営墓地31運営主体のうち30件がこの義務を定めていました。ただし、撤去する範囲(カロート・基礎などの地下構造物、巻石・囲い、掘り下げの深さ)まで具体的に公表しているのは9件で、残る21件は「原状回復」「更地」とだけ定めています。範囲が書かれていない墓地では、管理窓口への確認が要ります。

カロート(納骨室)や基礎まで撤去する必要がありますか?

撤去範囲を公表している墓地では、地下構造物まで撤去するのが基本です。明石市石ケ谷墓園はカロート・基礎などの地下構造物をすべて取り除いて良質土で埋め戻す、北九州市立霊園はコンクリート基礎を撤去して土中の骨壷を十分に掘り返す、川崎市営霊園はカロート底面から30cm掘り下げて職員立会いで遺留物がないことを確認する、と定めています。一方、相模原市営霊園は市が設置したカロート等は撤去しないよう案内しており、「すべて撤去」が常に正しいわけではありません。

撤去範囲が公表されていない公営墓地では、どう確認すればよいですか?

見積もりを取る前に管理窓口へ「どこまで撤去して返還するか」を確認し、その内容をそのまま石材店に伝えます。神戸市立墓園は傾斜地など基礎部分の撤去範囲が分かりにくい場合は事前に管理事務所へ相談するよう案内し、岡山市営墓地も撤去範囲について困るときは事前に相談するよう案内しています。仙台市営墓地は、更地かどうかの判定を墓園管理事務所が行い、更地証明を受けてから廃止届を出す運用です。

原状回復をせずに公営墓地を返還できることはありますか?

例外として定めている墓地があります。高砂市公園墓地は市長の承認を得た場合に限り現状のまま返還でき、千葉市営霊園も市長が認める場合に限り現状のまま返還できますが、千葉市では現状のまま返した場合の使用料還付額が、原状に復した場合より低く定められています。都立霊園の条例にも、特別の事情があると知事が認めるときの例外規定があります。いずれも原則は原状回復で、例外の適用には申請と承認が要ります。

撤去工事の写真や完了検査は必要ですか?

実査した31運営主体のうち、9件が撤去前後などの写真の提出を求め、10件が完了検査・職員立会い・更地証明を経る運用でした。福岡市立霊園はカロート撤去前から工事完了後までの写真5点を返還届に添付し、川崎市営霊園は職員立会いで遺留物がないことを確認します。撮り忘れた写真は後から用意できないため、施工前に石材店と撮影の分担を決めておきます。

次の一歩:管理者の仕様を石材店に渡す

手元の墓地使用許可証で墓地名と区画を確かめ、管理窓口に撤去範囲・写真・検査・届出の4点を聞く。その答えを書面にして石材店に渡す。ここまでが、見積もりを取る前の準備です。ご自身の墓地が31例に含まれていれば、墓地ごとの詳細ページに返還届の様式名・工事届の期限・還付の条件まで載せています。含まれていない墓地の追加はお問い合わせからお知らせください。

今すぐ工事を決める必要はありません。「する・しない・様子見」のどれも同格の選択肢です。当サイトは申請の代理や工事の斡旋は行いませんが、確認すべき項目の整理と公式情報の探し方はお手伝いできます。

管理者の仕様が手に入ったら、同じ条件を複数の石材店に一度に伝える手段として、一括見積もりサービスという選択肢もあります(以下は広告リンクです)。
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参照元

大久保亮佑

執筆・編集

大久保亮佑株式会社Kogera代表

生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)

墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。

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