公営墓地の墓じまい。返還・撤去・還付の条件を7例で比較

大久保亮佑

執筆・編集: 大久保亮佑株式会社Kogera代表生前整理アドバイザー2級

更新日: 2026年8月28日

市営・町営・都立の墓地は、墓石を撤去するだけでは墓じまいが終わりません。返還届、工事の事前承認、原状回復、完了検査までを管理者のルールに沿って進めます。

しかも、原状回復の仕様、業者指定、使用料の還付、園内の合葬式墓地へ移せるかは墓地ごとに違います。ここでは自治体公式ページ・例規・公式様式を確認できた7件(24か所)を比較します。

7件の返還条件を比較

次の表は、各自治体の公式ページ・例規・公式様式で確認した内容です(最終確認 2026年8月28日)。 対象は兵庫県・東京都・神奈川県7運営主体(市・町・都)、墓園・墓地としては24か所。 同じ公営墓地でも、還付の期間、業者指定、原状回復の細かさは一致しません。

公営墓地7件の返還・撤去・還付条件
墓地原状回復の仕様石材業者の指定使用料等の還付園内の合葬先
稲美町・奥ノ池墓地公式に記載あり公式記載なし自主返還では、既納の永代使用料の半額が還付対象です。永代管理料まで含む総納付額の半額とは確認できていません。還付申請書も公式様式に含まれます。公式記載なし
高砂市・高砂市公園墓地公式に記載あり指定なし既納の使用料は原則還付されません。ただし使用許可後3年以内なら、使用料と管理料の半額を還付する場合があります。「必ず半額が返る」制度ではありません。公式記載なし
明石市・石ケ谷墓園公式に記載あり指定なし使用許可後5年以内の返還なら、使用料と管理料の半額が還付対象です。あり
神戸市・神戸市立墓園公式に記載あり指定なし公式記載なしあり
加古川市・日光山墓園公式に記載あり公式記載なし根拠は施行規則第10条第1項です。条例第12条により市が使用墓地を返還させたときは、既納の使用料及び管理料の全額。使用を許可した日から5年以内に条例第13条により使用者が返還したときは、既納の使用料の半額(管理料は含まれません)。5年を超える返還は還付の対象外です。あり
都立霊園公式に記載あり公式記載なし条例第15条は、既納の使用料・管理料を還付しないことを原則としています。ただし施行規則第14条第1号により、埋蔵施設または長期収蔵施設の使用者が許可を受けた日から3年以内に条例第16条の届出と原状回復を行ったときは、使用料の半額が還付されます(条例第20条第1項の埋蔵施設の変更による使用許可、および第20条の2第1項の施設の変更の許可を受けたときを除きます)。短期収蔵施設は、使用経過期間に応じて3分の2・半額・3分の1です。還付を受けるには、使用料還付請求書(別記第十一号様式)を提出します。あり
横浜市・横浜市営墓地公式に記載あり公式記載なし条例は「既納の使用料及び管理料は、返還しない。ただし、規則で定める場合は、市長は、その全部又は一部を返還することができる」と定めています。その例外を定める施行規則第7条の対象は、壁面式納骨施設・家族納骨壇・焼骨短期保管施設・式場であり、一般の墓所の返還について還付を定めた条文は確認できませんでした。したがって一般墓所は原則として還付されないと読めますが、個別の取り扱いは管理事務所へご確認ください。あり

墓地名から、返還届の様式名・原状回復の仕様・工事届の期限・還付の根拠条文までを載せた個別ページに移れます。

実査して分かったこと

条例・施行規則・公式ページを1件ずつ読み比べると、公営墓地の墓じまいでつまずく箇所がどこかが見えてきます。

  • 原状回復の義務はどこにもあるが、「どこまで」の粒度が揃っていない。7件すべてに原状回復についての公式の定めがありました。ただし中身は同じではありません。 明石市石ケ谷墓園は地下構造物の撤去から良質土での埋戻し、表層5cmの真砂土敷きならし、工事前後の写真まで指定しています。 一方で稲美町奥ノ池墓地は「町長が指定する期間内に原状回復する」、東京都霊園条例第16条は「直ちに知事に届け出るとともに、当該施設を原状に回復しなければならない」とだけ定めており、撤去範囲の具体的な仕様までは示されていません。 ここが曖昧なまま見積もりを取ると、業者ごとに金額の前提が変わります。
  • 指定業者の有無は、明記する自治体と黙っている自治体で半々。指定がないと明記していたのは3件、記載が見当たらなかったのは4件でした。 神戸市は返還手続きの案内文書に「本市の墓園、墓地に関する工事の指定業者はありません」と明記しています。 一方、稲美町奥ノ池墓地・加古川市日光山墓園・都立霊園は、条例・規則・公式ページのいずれにも定めが見当たりませんでした。 書かれていないことは「指定がない」という意味ではないため、工事を発注する前の確認が要ります。
  • 還付は「原則なし、例外あり」の形が多く、年限は3年か5年に分かれる。条件つきで還付を確認できたのが5件、記載が見当たらなかったのが1件。 高砂市公園墓地と都立霊園は使用許可から3年以内、明石市石ケ谷墓園と加古川市日光山墓園は5年以内です。 対象費目も一致しません。加古川市は施行規則第10条で「使用料の半額」と定めており管理料は含まれない一方、明石市は使用料と管理料の半額が対象です。 東京都は条例第15条で不還付を原則としたうえで、施行規則第14条第1号で3年以内の届出・原状回復に限って使用料の半額を還付します。
  • 合葬先へ移すと還付を受けられなくなる制度がある。都立霊園の施設変更制度は、承継者がいない使用者が墓所を返還して遺骨を都の合葬式墓地へ移す仕組みですが、 施行規則第14条第1号は「施設の変更の許可を受けたときを除く」として、この場合を使用料還付の対象から外しています。 お墓を更地にする費用は使用者の負担のままです。どちらが有利かは、返還時期と残りの管理料で変わります。
  • 工事届の期限が短い。神戸市立墓園は施工の7日前まで、高砂市公園墓地は工事の1週間前まで、都立霊園は工事を行おうとするとき「あらかじめ」埋蔵施設設備工事施行届を提出します。 加古川市日光山墓園と稲美町奥ノ池墓地は完了後5日以内に完了届を出して検査を受けます。石材業者と日程を決める前に確認が要ります。

公営墓地を返還する前に確認する順序

  1. 墓地管理窓口へ連絡し、返還と工事に必要な現行様式、提出期限、原状回復仕様を確認する。
  2. 遺骨の移転先を決める。園内の合葬式墓地へ移せる場合も、利用申込みが別に必要になる。
  3. 改葬許可の条件を確認する。一般墓地から同じ園内の合葬先へ移すときに通常の改葬申請が不要な例もある。
  4. 石材業者へ見積もりを依頼する。指定業者の有無と、地下構造物・埋戻し・写真提出まで見積もりに含むかを確かめる。
  5. 工事の事前届・承認を済ませ、完了後に写真、完了届、検査を受ける。
  6. 返還と還付申請を行う。還付は期限と対象費目が限定されるため、工事契約前に条件を確認する。

届出と工事の順序は墓地ごとに異なるため、この6項目を一般的な確認リストとして使い、実際の提出順は管理窓口の案内に従ってください。

墓地ごとの詳細ページ

収録は順次増やしています。掲載してほしい公営墓地があればお問い合わせからお知らせください。条例・規則・公式様式を確認したうえで追加します。

石材業者を選ぶ前に確認すること

  • 墓地管理者の指定業者制度があるか。公式資料に記載がなければ管理窓口へ確認する。
  • 見積もりに地下基礎・カロートの撤去、残土・廃石材の搬出、埋戻し、表層仕上げが含まれるか。
  • 工事前・工事中・工事後の写真撮影と、完了届の提出を業者が担うか。
  • お盆・彼岸・年末年始などの工事禁止期間、着工前届の期限、完了検査の日程を守れるか。
  • 追加費用が出る条件を契約前に書面で確認する。

管理者が求める仕様を業者へ先に渡すと、見積もりの範囲を揃えやすくなります。金額だけでなく、届出・写真・検査まで完了できる内容かを比較してください。

次に用意するもの

手元にある墓地使用許可証を確認し、墓地管理窓口から返還届・工事関係様式・原状回復仕様を入手します。次に、遺骨の移転先と改葬許可の要否を確定し、同じ仕様書で複数の石材業者から見積もりを取ります。

使用料の還付や合葬先の免除制度は、申込みの時期や返還との同時手続きが条件になることがあります。工事を発注してからでは順序を戻せないため、還付と合葬の条件を最初に窓口へ確認してください。

公営墓地の墓じまいについてよくある質問

回答はすべて、当サイトが7件の公営墓地について条例・施行規則・公式ページを実査した内容と、その集計だけで書いています。公式に記載がない項目は「記載なし」とそのまま答えています。

公営墓地(市営・町営墓地)の墓じまいは、民営霊園と何が違いますか?

公営墓地の墓じまいは、墓石を撤去して終わりではありません。返還届の提出、工事の事前届、原状回復、完了検査という順序が条例・規則で定められており、その内容は霊園ごとに異なります。当サイトが条例・施行規則・公式ページを実査した7件(兵庫県・東京都・神奈川県の24か所)では、原状回復についての公式の定めは7件すべてにありましたが、撤去範囲の具体的な仕様まで示している霊園と、「原状に回復する」とだけ定めている霊園があります。石材業者の指定がないと明記していたのは3件、指定の有無が公式に確認できなかったのは4件でした。対象は稲美町奥ノ池墓地、高砂市高砂市公園墓地、明石市石ケ谷墓園、神戸市神戸市立墓園、加古川市日光山墓園、東京都都立霊園、横浜市横浜市営墓地です。

公営墓地を返還すると、使用料や管理料は返ってきますか?

霊園ごとに違います。当サイトが実査した7件では、条件つきで還付があると確認できたのが5件、条例で還付しないと定めていたのが1件、還付についての記載が公式資料に見当たらなかったのが1件でした。還付がある場合も「使用許可から3年以内」「5年以内」など期限があり、対象が使用料だけか管理料も含むかは霊園によって異なります。横浜市営墓地のように、条例が「既納の使用料及び管理料は、返還しない」と定めたうえで、例外を納骨施設に限っている例もあります。還付の条件は工事を発注したあとでは動かせないため、見積もりを取る前に管理窓口へ確認してください。

公営墓地の墓石撤去は、どの石材業者に頼んでもよいですか?

当サイトが実査した7件では、石材業者の指定がないと公式に明記していたのが3件、指定の有無について記載が見当たらなかったのが4件でした。記載がないことは「指定がない」という意味ではありません。指定がない場合でも、管理者が求める撤去仕様(地下構造物の撤去範囲、埋戻し、表層の仕上げ、工事前後の写真)を先に業者へ伝えないと、見積もりの範囲が業者ごとにばらつきます。

公営墓地の返還と改葬許可は同じ手続きですか?

別の手続きです。改葬許可は墓地、埋葬等に関する法律第5条にもとづく行政処分で、申請先はいま遺骨が納められている墓地がある市区町村です。一方、公営墓地の返還は墓地使用許可という契約の解除で、根拠は各自治体の設置管理条例・施行規則にあります。同じ自治体でも、改葬許可は戸籍・市民課系、霊園の返還は公園・環境系と担当課が分かれることが多いため、それぞれの窓口を確認してください。

園内の合葬式墓地へ移す場合も改葬許可は必要ですか?

霊園によって扱いが異なります。当サイトが実査した7件のうち、園内に合葬先があると確認できたのは5件で、そのうち明石市石ケ谷墓園は一般墓地から園内の合葬式墓地へ移す場合は通常の改葬許可申請が不要と案内しています(合葬式墓地の利用申込みは別に必要)。一方、都立霊園の施設変更制度は「現在使用しているお墓を返還して、ご遺骨を東京都の合葬式墓地に改葬し」と案内しており、改葬にあたることを前提にしています。さらに東京都霊園条例施行規則第14条第1号は、施設の変更の許可を受けたときを使用料還付の対象から除いています。園内移動だから不要・有利と決めつけず、管理窓口へ確認してください。

参照元

大久保亮佑

執筆・編集

大久保亮佑株式会社Kogera代表

生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)

墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。

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