墓じまいをしないとどうなる?しない・様子見を選んだ家族に年単位で起きること(管理料・承継・無縁墳墓)と5つの判断軸

大久保亮佑

執筆・編集: 大久保亮佑株式会社Kogera代表生前整理アドバイザー2級

更新日: 2026年9月3日

墓じまいをしないとどうなる|当サイトが実査した公営墓地23運営主体のうち、園内に合葬墓があるのは16件

墓じまいをしないと、すぐには何も起きません。罰則はなく、管理料を納めて管理者と連絡が取れている限り、お墓は今のままです。変化が起きるとすれば、管理料・名義の承継・無縁墳墓の手続きという3つの経路のどれかを通って、年単位で進みます。

「しない」と決めたのに、どこか落ち着かない。「まだ決めない」を選んだあとで、何かを見落としていないか気になる。この記事は、そういう方に向けて、いつ・何が起きるかを時間の順に並べ、しない・様子見を選び取るための判断軸を示すものです。墓じまいを勧めるためのものではありません。

この記事の要点

罰則ない。法律は「改葬するときは許可が要る」と定めるだけで、改葬を義務づけていない(墓地、埋葬等に関する法律 第5条)
すぐ起きることなし。管理料を納め、管理者と連絡が取れている限り現状のまま
年単位で起きる3経路①管理料の納付が続く(例: 札幌市営霊園 1区画1年6,800円)②名義人に何かあれば承継(民法 第897条)③連絡が途切れると無縁墳墓の手続き(施行規則 第3条: 官報公告+立札1年)
あとから選べる道当サイト実査の公営墓地23運営主体(126墓園・16都道府県)のうち、園内に合葬式墓地・合葬墓があるのは16件。返還時に条件つきで還付があるのは14件、条例で還付しないと定めるのは6
周りの状況2024年度の改葬件数は176,105件(厚生労働省 衛生行政報告例。遺骨数ベースで、墓じまいの基数ではない)。一方で、費用を具体的に知らない人は88.6%(終活協議会2026年6月調査、n=860)
この記事の立場「しない」「様子見」は、墓じまいと同格の結論として扱う

しないことに罰則はなく、すぐには何も起きない

墓地、埋葬等に関する法律 第5条が定めているのは、「改葬を行おうとする者は市町村長の許可を受けなければならない」ということです。改葬とは、いまのお墓にある遺骨を別のお墓や納骨堂へ移すこと(第2条第3項)。法律は、移すときの手続きを決めているだけで、移すことを義務づけてはいません。墓じまいをしない、という選択に対して法律が何かを課すことはありません。

では「放置」という言葉で検索される状態、つまり誰もお参りに行かず、手入れもされないお墓はどうなるのか。ここでも、すぐに何かが起きるわけではありません。管理料が納められ、管理者(寺院・霊園・自治体)が名義人と連絡を取れている限り、お墓は契約どおりそこにあります。荒れていること自体を理由に撤去される制度はありません。罰則の有無と無縁墓になる条件の詳しい整理は墓じまいをしないとどうなる(制度上の事実)にあります。この記事では、その先の「いつ・何が起きるか」を時間の順に並べます。

時系列:いつ・何が起きるか(3つの経路)

しない・様子見を選んだあとにお墓の状態が変わるとすれば、通る経路は3つです。管理料、承継、無縁墳墓。どれも「ある日突然」ではなく、年単位の出来事が積み重なって進みます。表にすると次のようになります。

墓じまいをしない場合の時系列(法令と公営墓地の条例・案内から整理)
時期の目安起きること誰が動くか根拠
今年〜数年何も変わらない。管理料・護持会費の請求が毎年届く名義人(納付)各墓地の条例・使用規則
名義人に何かあったときお墓を承継する人を決め、管理者に名義変更(承継)と連絡先を届け出る家族(届出)民法 第897条/各墓地の承継届
納付と連絡が途切れたあと管理者から督促・連絡。届かない場合、使用規則にもとづく使用許可の取消しや無縁墳墓の判断へ管理者各墓地の条例・使用規則(年数は規則ごと)
無縁墳墓と判断されたあと官報に掲載し、お墓に立札を1年間掲示。申し出があれば通常の相談に戻る管理者施行規則 第3条
公告期間に申し出がなかったあと管理者が改葬許可を申請し、遺骨を合葬墓等へ移す。墓石は撤去される管理者(申請)施行規則 第3条/法律 第5条

この表で大切なのは、下に進むほど「家族が動く」から「管理者が動く」へ主語が変わることです。上の2段までは、家族の側に手綱があります。しない・様子見を選ぶなら、この2段を家族の側で押さえておく。それだけで、下の3段は起きません。

経路①:管理料は年額×年数で続く(公営墓地23運営主体を実査)

「しない」の費用は、年額の管理料に年数を掛けたものです。公営墓地では条例で金額が定まっています。当サイトが条例と公式案内を実査した公営墓地23運営主体(126墓園・16都道府県)から、確認できた例を挙げます。

  • 札幌市営霊園……墓地管理料は令和8年4月から年1回の徴収で、1区画1年6,800円。「一度納入された墓地管理料は、いかなる理由があっても返還できません」と案内され、墓じまいによる減免は納入前の申請が必要です。使用料については札幌市墓地条例 第16条が既納の使用料・管理料・手数料を還付しないと定めています(2026年9月3日確認)。
  • 京都市営墓地……年度の途中で使用を終了しても、その年度分の管理料は納める必要があります(2026年9月3日確認)。「今年はやめておく」を選んだ年の分は、区切りに関係なく発生します。

寺院墓地では、護持会費・管理料という名目の年会費が続くのが一般的です。金額は寺院ごとに違い、当サイトは寺院別の集計を持っていません。民営霊園は契約書に年間管理費の定めがあります。いずれの区分でも、「しない」を10年続ければ年額の10倍がかかる。この掛け算を先にしておくと、様子見の費用が見えます。なお、返還したときに使用料が戻るかどうかは運営者で分かれ、実査23件のうち条件つきで還付があるのは14件、条例で還付しないと定めているのは6件、記載を確認できなかったのは3件でした。

経路②:名義人に何かあったとき(承継)

お墓の名義人(使用者)が亡くなったり、施設に入って手続きができなくなったりしたとき、お墓は誰のものになるのか。民法 第897条は、系譜・祭具・墳墓の所有権は「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定め、被相続人の指定があればその人が、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めるとしています。相続財産とは別の扱いで、遺産分割の対象になりません。

制度としての承継が決まっても、管理者への届出がなければ、管理者からの連絡は前の名義人の住所に届き続けます。ここが、経路③(無縁墳墓)への入口です。公営墓地の案内には、承継の手続きが具体的に書かれています。福岡市立霊園は、返還の前に、利用者が死亡している場合の利用権承継が必要と案内しています(2026年9月3日確認)。八事霊園・愛宕霊園は、使用者が亡くなっている場合は名義変更(承継)と墓じまいを同時に申請できるとしています(2026年9月3日確認)。日光山墓園は、一般墓地の使用者が園内の合葬式墓地の生前予約を申し込む場合、返還申請か承継申請が必要としています(2026年8月27日確認)。

「しない」を選ぶ家族にとって、承継は墓じまいより先に来る手続きです。次の名義人を誰にするか、その人の連絡先を管理者に届け出るか。この2つが済んでいれば、名義人に何かあってもお墓の状態は変わりません。継ぐ人がいない場合の考え方は継ぐ人がいない場合で整理しています。

経路③:連絡が途切れたとき(無縁墳墓)

管理料の納付が止まり、管理者からの連絡も届かなくなったとき、はじめて管理者の側が動きます。各墓地の条例・使用規則には使用許可の取消しに関する条項があり(たとえば札幌市墓地条例 第15条)、何年の未納で取消しになるかは規則ごとに違います。当サイトは、この年数を横断的に集計していません。ご自身のお墓の基準は、使用規則を管理者に確かめるのが確実です。

無縁墳墓と判断されたあとの手順は、法律の施行規則 第3条が全国共通に定めています。縁故者に申し出を求める内容を官報に掲載し、あわせてお墓の見やすい場所に立札を1年間掲示する。その期間に申し出がなければ、管理者は改葬の許可を申請し、遺骨を合葬墓などへ移します。逆に言えば、立札が立ってから1年の間に連絡をすれば、通常の相談に戻ります。通知や立札に気づいたときに何を確認するかは無縁墓の通知が届いたらに分けています。

この経路は、「しない」を選んだ家族に起きるものではありません。連絡が途切れた家族に起きるものです。経路②の届出が済んでいれば、ここへは進みません。

しない・様子見を選び取るための5つの判断軸

しない・様子見が「先延ばし」になるか「選び取った結論」になるかは、次の5つを家族が言葉にできているかで決まります。どれも、墓じまいをするかどうかとは別に、いまのお墓を持ち続けるために要ることです。

  1. お参りの実態
    誰が、年に何回、どこから通っているか。「お墓が遠い」は墓じまいの動機の上位ですが、通っている人がいる間は、それが「しない」の根拠になります。通う人が一人だけなら、その人に何かあったときが再検討の時期です。
  2. 次の名義人と、届け出ている連絡先
    経路②で見たとおり、承継と連絡先の届出が済んでいれば、名義人に何かあっても管理者からの連絡は途切れません。管理者に登録されている住所・電話が現在のものかを、一度確かめておく。それだけで経路③は閉じます。
  3. 管理料を、誰が、何年払うか
    年額×年数。払う人が決まっていて、その人が納得していれば、費用の面で「しない」は成立します。払う人が「なんとなく自分」になっている場合は、家族で名前を出しておく必要があります。
  4. お墓の区分(寺院・公営・民営)
    「しない」の負担は区分で変わります。寺院墓地なら檀家としての関係と護持会費が続き、公営墓地なら条例上の管理料と承継届、民営霊園なら契約上の年間管理費。同じ「しない」でも、続いていくものが違います。
  5. 将来の選択肢が、いまの墓地の中にあるか
    次の見出しで示すとおり、公営墓地には園内の合葬墓へ移す仕組みを持つところがあります。いまの墓地の中に道があるなら、「しない」の間に外へ動く必要はありません。

この5つのうち3つ以上が空欄なら、それは「しない」ではなく「決めていない」に近い状態です。逆に埋まっているなら、「しない」は十分に結論です。周りの数字を添えておくと、2024年度の改葬件数は176,105件(厚生労働省 衛生行政報告例。遺骨数ベースで、墓じまいの基数ではありません)。一方で、終活協議会の2026年6月調査(n=860)では88.6%が墓じまいの費用を具体的に知らず、鎌倉新書の2026年1月調査(n=733)では中止理由の1位が「費用の高さ」でした。動く人も多く、動かない人も多い。どちらにも根拠があります。

あとから選べる道は、いまの墓地の中にもある(園内合葬墓16件)

様子見を選ぶときに気になるのは、「あとで動けなくなるのではないか」という点です。改葬許可は「改葬しようとするときに受ける」ものなので、いつ始めても手続きは同じです。加えて、公営墓地には園内で完結する道があります。当サイトが実査した23運営主体のうち、園内に合葬式墓地・合葬墓があるのは16件でした。

都立霊園には、承継者がいない使用者を対象とした「施設変更制度」があります。現在のお墓を返還し、遺骨を東京都の合葬式墓地(小平霊園・八柱霊園)へ改葬して、東京都が使用者に代わって遺骨を管理する仕組みで、合葬式墓地は使用料・年間管理料が不要です。年度により実施の有無や受付期間が異なるため、毎年4月以降に使用している霊園への問い合わせが必要とされています(2026年8月27日確認)。札幌市営霊園の合同納骨塚は、市営霊園・墓地を返還する方が使用でき、使用料は1体につき9,100円で以後の管理料はありません(2026年9月3日確認)。

園内の合葬墓へ移すのも法律上は改葬なので、改葬許可申請は要ります。ただ、行き先を外に探す必要がなく、同じ管理者の中で手続きが完結します。公営墓地の返還届・原状回復・還付の仕様は市営墓地の返還・撤去に霊園ごとに整理してあり、公営墓地内での施設変更は公営墓地内の施設変更に分けています。改葬の手続きそのものは改葬許可証とは自治体別データベースで、いつでも確認できます。

よくある質問

回答中の公営墓地の件数は、当サイトが条例と公式案内を実査した23運営主体(126墓園)のデータからの集計です。寺院墓地・民営霊園の年額は当サイトに集計がなく、一般化していません。

墓じまいをしないと、どうなりますか?

すぐには何も起きません。墓じまいをしないこと自体に罰則はなく、墓地、埋葬等に関する法律は「改葬するときは許可が要る」と定めているだけで、改葬を義務づけてはいません。変化が起きるとすれば、管理料の納付が続くか、名義人に何かあったときに承継の手続きが要るか、管理者と連絡が取れなくなって無縁墳墓の手続きが始まるか、という3つの経路のどれかを通ります。どれも年単位で進みます。

お墓を放置すると、何年で無縁墓になりますか?

全国一律の年数は法律にありません。無縁墳墓とみなす基準を持っているのは、それぞれの墓地・霊園の使用規則です。法律の施行規則 第3条が定めているのは、管理者が無縁墳墓を改葬する前に官報へ掲載し、お墓に立札を1年間掲示するという手順で、その期間に縁故者から申し出があれば通常の相談に切り替わります。「放置=すぐ撤去」ではなく、連絡が届く経路を残しておくことが分かれ目になります。

墓じまいをしない場合、費用はかかり続けますか?

墓地の区分によります。公営墓地では年間の管理料を定めているところがあり、たとえば札幌市営霊園は1区画1年6,800円(令和8年4月から年1回徴収)です。寺院墓地では護持会費・管理料の名目で年会費が続くのが一般的です。当サイトが実査した公営墓地23運営主体のうち、返還時に条件つきで使用料等の還付があるのは14件、条例で還付しないと定めているのは6件でした。「しない」の費用は、年額×年数で見えてきます。

様子見を選んでも、あとから墓じまいはできますか?

できます。改葬許可は「改葬しようとするときに受ける」ものなので、いつ始めても手続きは同じです。公営墓地では、返還と同時に園内の合葬墓へ移す仕組みを持つところがあり、当サイトが実査した23運営主体のうち園内に合葬式墓地・合葬墓があるのは16件でした。都立霊園には、承継者がいない使用者が現在のお墓を返還して東京都の合葬式墓地へ改葬する「施設変更制度」もあります。あとから選べる道は、いまの墓地の中にもあります。

墓じまいをしないと決めた家族は、何を確認しておけばいいですか?

5つです。誰が・年に何回お参りしているか。次の名義人がいるか、管理者に届け出ている連絡先が現在のものか。管理料・護持会費を誰が何年払い続けるか。お墓が寺院墓地・公営墓地・民営霊園のどれか(区分で「しない」の負担が違う)。将来の選択肢がいまの墓地の中にあるか(園内の合葬墓、承継の制度)。この5つが揃っていれば、「しない」は先延ばしではなく、選び取った結論になります。

次の一歩:決めないと決めた日を残す

しない・様子見を選ぶなら、いま決めることは何もありません。ただ、5つの判断軸のどれが埋まっていて、どれが空欄かを、家族の誰かが見える形で残しておく。それだけで、次にお墓の話が出たとき、最初からやり直さずに済みます。様子見を結論にした家族が確認しておく7つは墓じまいをしないという選択に、話の切り出し方は家族にどう切り出すかにあります。

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参照元

大久保亮佑

執筆・編集

大久保亮佑株式会社Kogera代表

生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)

墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。

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