墓石の自己処分は現実には難しい|公営霊園40件が撤去に届出・検査を求め、石材は産業廃棄物になりうる
執筆・編集: 大久保亮佑(株式会社Kogera代表/生前整理アドバイザー2級)
更新日: 2026年10月1日
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墓石の撤去に数十万円かかると聞くと、自分で外して処分すれば浮くのではないか、と考えるのは自然なことです。
終活・お墓の相談所いのりが紹介する施工事例には、石材店に頼んで約27万円(三重県北部)、約60万円(岐阜県東部)という金額があります。一方で、当サイトが公式資料を実査した公営霊園の運営主体70件のうち40件は、撤去工事に届出・承認・検査などの手続きを定めていました。
結論:禁じる規定は確認できていない。壁は4つある
墓石を家族が自分で解体・処分することを、直接禁じる規定は、当サイトが確認した公式資料の範囲では見つかっていません。ただ、見つからなかったことと、問題なくできることは別の話です。
なお、条文そのものはe-Gov法令検索に接続できず(2026年10月1日時点でメンテナンス中)、直接読めていません。そのため条文番号は挙げず、環境省の通知と自治体の公式ページで確認できた範囲だけを書きます。
実務で立ちはだかるのは、次の4つです。
- 墓石の重量と、重機・運搬の手配
- 隣のお墓や共有する外柵への影響
- 霊園への届出と、工事後の検査
- 撤去した石材の、廃棄物としての扱い
石材店への依頼費用の目安は墓石の撤去費用相場にあります。ここでは費用の大小ではなく、自分でやる場合に何が待っているかを順に見ます。
壁1:重量と重機
終活・お墓の相談所いのりは、自力での処分が難しい理由として、墓石が非常に重いこと、重機での作業には危険が伴い、墓地の参道の養生など段取りが必要なこと、隣のお墓に傷をつけると賠償問題になりかねないことを挙げています(2026年10月1日確認)。
同じページの施工事例は、すべて石材店に依頼した例です。三重県北部は重機が入れない立地で手運びの撤去、約27万円。岐阜県東部は山上の難所で重機が使えず、50段以上の階段を手で運び出して約60万円。愛知県南部は遺骨の取り出しから寺院への配送までを含めて約18万円でした(いずれも税込)。現場の条件で、必要な人手と設備がまるで違うことが分かります。
これは自力で処分した場合の費用ではありません。自分で行う場合の金額を示す公式の資料や統計は、当サイトでは確認できていません。
壁2:隣のお墓への影響
区画が密集した霊園では、外柵や巻石が隣のお墓と共通になっていることがあります。兵庫県神戸市の池尻石材店(有限会社池尻石材工業)は、当サイトの取材にこう答えています。
基本的には、お墓の管理者と連絡を取りどこまでの撤去が必要かを確認しています。例えば間知石等が隣のお墓と共通になっている場合などは、管理者から隣のお墓の持ち主に連絡を取ってもらったりすることがございます。
回答は2026年9月6日にメールで受領した原文のままで、墓石の撤去費用相場にも掲載しています。どこまで撤去するかを自分だけでは決められず、管理者を通じた隣の区画との調整が入ることがある、という話です。
公式資料にも同じ配慮が出てきます。当サイトの実査では、西宮市立墓地が、施工にあたって墓地の施設や他人の墓碑等を損傷しないよう注意することを求めていました。
壁3:霊園への届出と検査(70件の実査)
公営霊園には、区画内で工事をするときの届出や承認の仕組みがあります。当サイトが公式資料を実査した運営主体70件(神戸市立墓園のように複数の園を束ねる運営主体は1件と数えます。確認日は最新で2026年10月1日)で、撤去工事の届出を分けると次のとおりです。
| 撤去工事の届出(区分) | 運営主体(全70件) | 公式資料の書かれ方 |
|---|---|---|
| 届出・許可あり | 40件 | 撤去工事にも届出・許可・承認や、完了届・検査などの手続きがあると公式資料で確認できたもの |
| 設置工事の届出あり(撤去への適用は記載なし) | 14件 | 墓石を設置・改修する工事の届出はあるが、撤去にも要るかどうかは公式資料に書かれていないもの |
| 届出不要と明記 | 2件 | 撤去工事の届出は不要と公式に明記しているもの(高知市・豊田市) |
| 公式記載なし | 14件 | 撤去工事の届出について、確認した公式資料に記載が見当たらなかったもの(調べたが確認できなかったという記録で、不要という意味ではありません) |
40件のうち、撤去が対象だと明記されている例を挙げます。都立霊園は、撤去工事も設備の工事にあたるとして着工前の届出を求めています。横浜市営墓地は撤去工事も届出と工事後の確認の対象、京都市営墓地は撤去に事前の許可が必要です。仙台市営墓地は申請書の様式名に「撤去」が含まれ、岐阜市営墓地と松山市営墓地も撤去を対象に含めています。
逆に、撤去の届出は不要と明記している運営主体もあります(高知市・豊田市)。14件は、大阪市設霊園のように設置工事の届出は示されていても、撤去に要るかどうかが書かれていません。手続きの有無は霊園ごとに違うので、手続きを知らずに始めてしまうことが最も避けたい点です。
もう一つ見ておきたいのは、手続きを誰が行う前提になっているかです。尼崎市墓園は、依頼した墓石業者が届を管理事務所へ提出する流れを案内しています。西宮市立墓地も撤去工事の届出は通常、石材業者等が行うとしています。川崎市営霊園では、工事施工者と連名で申請します。使用者本人が施工する場合に認められるかどうかを明記した運営主体は、当サイトの実査記録では確認できていません。横浜市営墓地の手続き一覧には「使用者以外の方は施工できません。」という注記がありますが、これが施工者の資格を指すのか届出者を指すのかは、公式資料からは判断できません。
指定石材店の有無も同じ整理です。指定業者はないと明記した運営主体が12件、残る58件は、確認した公式資料に記載が見当たりませんでした。指定業者「あり」と確認できた運営主体は、現時点ではありません。詳しくは公営霊園に指定石材店はあるのかにまとめています。
壁4:撤去した石材は廃棄物としてどう扱われるか
ここは、公式資料の書き方が一つに揃っていません。確認できたものを順に並べます。
国の通知:事業活動に伴うかどうかが分かれ目
環境省が掲載する昭和46年の通知(環整43号)は、一般廃棄物を産業廃棄物以外のすべての廃棄物とし、産業廃棄物を事業活動に伴って排出された廃棄物のうち法令で定める種類のものと整理しています。事業者は、事業活動に伴って排出するすべての廃棄物について処理責任を負う、とも書かれています。
建設工事については、平成11年の建設廃棄物処理指針が、排出事業者は原則として元請業者だとしています。「がれき類」は、工作物の除去に伴って生じたコンクリート破片などです。石材店が撤去工事を請け負えば、石材店が排出事業者として処理の責任を負う。見積書の「処理費」は、その費用です。
大阪府:宗教行為の一部か、単なる廃棄か、事業活動に伴うか
大阪府の公式FAQのQ24は「古くなった墓を除去した後廃棄する場合は、産業廃棄物になるか」を問い、宗教行為の一部として墓を除去し廃棄する場合は、廃棄物には当たらないと答えています。ただし、単なる廃棄物として埋立処分等される場合は廃棄物に該当し、それが事業活動に伴って排出される場合は、産業廃棄物の「がれき類」に該当するとされています(2026年10月1日確認)。
佐世保市:墓じまい後の墓石は産業廃棄物(がれき類)
佐世保市は、墓じまい後の墓石は産業廃棄物(がれき類)に該当するとして、許可を受けた産業廃棄物処理業者への委託を求めています。許可のない業者に処分を委託すると、その業者だけでなく、墓石を持ち込んだ業者も排出者責任を問われる可能性がある、という注意書きです(2026年3月12日更新、2026年10月1日確認)。
大阪府は場面を分けて書き、佐世保市は墓じまい後の墓石を産業廃棄物として扱う、と読める書き方です。自治体によって見解の書き方が違うことが、まず分かります。
では、個人が自分で撤去した石材はどうなるのか。国の通知の定義に当てはめれば、事業活動に伴わない廃棄物は産業廃棄物には当たらないことになります。ただ、個人が出した石材を市の施設が受け入れるのか、許可業者に頼むことになるのかは、自治体の公式情報で確認できていません。ここは断定せず、処分の前に自治体の廃棄物担当へ確認する場面です。
処分が価格に含まれていることも、見ておきたい点です。石材店12社の公表価格の表では、帝北石材・石のカンノ・牧之原石材・西村石材店・池尻石材店・城戸石材加工所・山野石材が、解体や処分(廃棄)を価格に含めると読めます。新海石材店も、石材やコンクリートガラの処理が見積もりの構成に入っています。自分で行えば、この処分の手配も自分の仕事になります。
墓石をそのままにして返還できるか
更地に戻さず、墓石を残したまま返せるのでしょうか。当サイトの実査では、運営主体70件のうち69件が、返還の条件として原状回復を定めています。残りの1件は、公式資料に記載が見当たりませんでした。墓石を残したままの返還を認める定めは、確認できていません。
仕様の細かさには差があります。地下構造物や埋戻しまで具体的に公表している運営主体は11件、「原状回復」「更地」とだけ定める運営主体は58件です。明石市の石ケ谷墓園は、カロートや基礎などの地下構造物をすべて取り除き、良質土で埋め戻して、表層5cmを真砂土で敷きならすところまで指定しています。そのうえ、施工前・地下構造物の撤去中・施工後の写真も求めています。
寺院墓地と民営霊園は、当サイトの実査の対象外です。使用規則によって扱いが分かれるため、管理者に事情を伝えて確認します。公営墓地の返還の条件は公営墓地・公営霊園の返還手続きに、返還時に払うお金は公営墓地の墓じまい費用にあります。
よくある質問
霊園の件数は、当サイトが実査した公営霊園の運営主体を数えたものです。廃棄物の扱いは自治体ごとの公式見解を並べており、法的な判断を示すものではありません。
墓石を自分で処分することは違法ですか?
家族が自分で解体・処分することを直接禁じる規定は、当サイトが確認した公式資料の範囲では見つかっていません。ただし、条文の原文(e-Gov法令検索)は確認できていないため、違法ではないと言い切ることもしません。実際には、重機と運搬の手配、隣のお墓への影響、霊園への届出、廃棄物の処分先という4つの壁があり、石材店に依頼する例が一般的です。
撤去した墓石は産業廃棄物になりますか?
ケースと自治体の見解によって書き方が分かれます。大阪府の公式FAQは、宗教行為の一部として墓を除去し廃棄する場合は廃棄物に当たらず、単なる廃棄物として処分され、それが事業活動に伴って排出される場合は産業廃棄物の「がれき類」に該当するとしています。佐世保市は、墓じまい後の墓石は産業廃棄物(がれき類)に該当するとして、許可を受けた処理業者への委託を求めています。個人が自分で出した石材の扱いは、当サイトでは自治体の公式情報で確認できていないため、処分前に自治体の廃棄物担当へ確認します。
自分で撤去するときも、霊園への届出は必要ですか?
実査した公営霊園の運営主体70件のうち、撤去工事に届出・承認・検査などの手続きがあると確認できたのは40件です。高知市有墓地と豊田市の古瀬間墓地公園は撤去工事の届出は不要と明記しています。14件は公式資料に記載が見当たりませんでした。届出の要否は霊園ごとに違うため、工事の前に管理者へ確認します。
墓石をそのままにして、更地に戻さずに返還できますか?
当サイトが実査した公営霊園では、運営主体70件のうち69件が返還の条件として原状回復を定めており、墓石を残したままの返還を認める定めは確認できていません。寺院墓地・民営霊園は実査の対象外のため、使用規則と管理者への確認が必要です。
隣のお墓と外柵を共有している場合はどうすればよいですか?
石材店の取材回答では、間知石などが隣のお墓と共通の場合、管理者から隣のお墓の持ち主に連絡を取ってもらうことがあるとされています。自己判断で手を入れず、先に墓地の管理者へ相談する進め方が実務上の対応です。
石材店に頼むと、撤去費用はいくらくらいですか?
当サイトの撤去費用相場の記事では、石材店の公表価格から1㎡あたり8万〜15万円を目安としています。個社の公表価格は12社分を並べており、解体・処分まで価格に含める会社と、遺骨の取り出しや基礎の撤去を別途とする会社があります。
次の一歩:石材店の内訳を確かめてから決める
重機、隣のお墓、霊園の手続き、廃棄物。4つを並べると、撤去を石材店に任せる意味は、作業そのものよりも、手続きと処分の責任を引き受けてもらうところにあります。ただ、自分でやるか頼むかの結論は、墓地の管理者に確認してからで遅くありません。焦って決める必要はありません。
石材店の価格は、12社の公表価格の表で並べて見られます。届いた見積書の内訳は見積書チェックリストで確かめられます。指定石材店のある墓地かどうかは公営霊園の指定石材店の記載が手がかりになります。
複数社への見積もり依頼を一度に行う手段としては、石材店の一括見積もりサービスという選択肢もあります(以下は広告リンクです)。
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参照元
- 環境省 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について(昭和46年10月16日環整43号、昭和49年3月25日改定)〔2026年10月1日〕
- 環境省 建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について(平成11年3月23日衛産20号・建設廃棄物処理指針)〔2026年10月1日〕
- 大阪府 産業廃棄物排出事業者のためのFAQ(Q24・A24)〔2026年10月1日〕
- 佐世保市 墓じまい後の墓石の処分依頼を受ける業者の皆様へ(2026年3月12日更新)〔2026年10月1日〕
- 終活・お墓の相談所いのり 墓石の解体・撤去に関する記事(自力処分が難しい理由と施工事例)〔2026年10月1日〕
- 池尻石材店(有限会社池尻石材工業)への取材回答(メール・2026年9月6日受領)〔2026年9月10日〕
- 当サイト 公営霊園70件の実査データ(撤去工事の届出・指定業者・原状回復)〔2026年10月1日〕
- 当サイト 墓石の撤去費用相場(石材店12社の公表価格の表)〔2026年10月1日〕

執筆・編集
大久保亮佑株式会社Kogera代表
生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)
墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。