墓じまいの親族の同意は法律上の要件ではない|承諾書が要る場面と、費用分担3つの型・同意書に書く項目

大久保亮佑

執筆・編集: 大久保亮佑(株式会社Kogera代表/生前整理アドバイザー2級)

更新日: 2026年10月1日

墓じまいの親族の同意は法律上の要件ではない|記事の要点を1枚にまとめた図版

「兄弟に相談せずに進めたら、あとで揉めるのではないか」。墓じまいを考えはじめた人から、たびたび聞く心配です。名義や費用の話に入る前に、まずここで手が止まる家庭は少なくありません。法律が求めているのは、改葬許可の申請で申請者が墓地使用者でないときの承諾書までで、きょうだい全員の同意書は求められていません。

ただ、書類が通ることと、家族が納得していることは別です。しかも話し合いのたびに浮かぶのは費用のこと。実態調査で最多だったのは31万〜70万円(鎌倉新書・n=733)ですが、供養先の選び方で総額は大きく動きます。法律が決めている範囲と、家族の側で決めておきたい範囲を分けて、同意の取り方・費用分担の型・同意書に書く項目を整理しました。

この記事の要点

法律が求める同意申請者が墓地使用者でないときの承諾書(または裁判の謄本)まで。きょうだい全員の同意書は法定書類ではない(施行規則第2条)
承諾書が要る場面子が申請者になり、名義人が親のまま。名義人本人が申請するなら要らない
同意の取り方声をかける範囲を決め、同じ情報を同じ時に渡し、まだ決まっていないことも書き、記録を残す
費用分担の型承継者が持つ/きょうだいで分担する/これから供養を担う人が持つ。法律上の正解はない
同意書の項目公式の書式はない。自治体の承諾書様式から読み取れる項目と、家族間で食い違いやすい項目に分けて整理

法律が求めているのは「承諾書」まで

改葬許可の申請について定めた墓地、埋葬等に関する法律施行規則の第2条は、申請書に添える書類を3つ挙げています。いまの墓地の管理者が作る埋葬・埋蔵・収蔵の証明、市町村長が特に必要と認める書類、そして真ん中の1つが次の書類です。

墓地使用者等以外の者にあつては、墓地使用者等の改葬についての承諾書又はこれに対抗することができる裁判の謄本若しくは裁判の内容を記載した書面(第2条第2項第2号・抜粋)

主語は「墓地使用者等以外の者」です。申請する人が名義人(墓地使用者)本人なら、この書類は要りません。申請者が別の人のとき、名義人の承諾書か、それに対抗できる裁判の謄本を添える。条文にあるのは、ここまでです。きょうだいや親族の同意書を添えなさい、とはどこにも書かれていません。

承継者を指定された人が断れるのか、承継しても墓じまいはできるのか、という隣の疑問は承継者がいないときの記事の該当節に、名義人の権限と家族の中で「決めていい人」をつくる話は墓じまいは誰が決める?にまとめています。この記事は、その先の「同意をどう取るか」「費用をどう話すか」「書面に何を書くか」を扱います。

承諾書が要る場面と、要らない場面

「親族の同意」と言われて頭に浮かぶものは、場面ごとに分けると、法律上の扱いがまったく違います。

「同意」と呼ばれがちな場面と、法律上の扱い
場面法律上の扱い
名義人本人が申請者になる承諾書は不要。上越市の作成例にも、申請者が墓地使用者本人の場合はこの書類の添付は不要、との注記があります
名義人は親のまま、子が申請者になる名義人の承諾書(または裁判の謄本)が法定の添付書類。名義人が書く
名義人がすでに亡くなっている承諾書を書ける本人がいない。扱いは自治体で分かれる(名義人が亡くなった場合の記事)
きょうだい・親族の同意法定の書類ではない。家族の側で、納得のために取るもの

窓口に行く人と申請者が別になる「委任状」は、承諾書とは役割の違う書類です。違いは代理申請の記事に、必要書類の全体像は必要書類の記事にあります。

自治体の承諾書様式を開いてみた

法定の承諾書は、どんな書面なのか。2026年10月1日に、自治体が公開している様式のPDFを原文で開いて確認しました。確認したのは、城陽市・東京都北区・立川市・稲沢市・高岡市の承諾書様式と、品川区の一体様式、上越市の作成例です。

自治体の承諾書様式(原文で確認できたもの)
自治体・見出し様式に印字されていた項目
城陽市「承諾書(改葬同意書)」墓地使用者の氏名・住所/改葬を行う者/現在の墓地・納骨堂の名称/改葬先の場所・名称/対象者の氏名・本籍・住所・性別・死亡年月日
東京都北区「改葬についての承諾書」墓地使用者の住所・氏名/墓地の名称又は所在地/改葬する人の住所・氏名・墓地使用者との関係・連絡先
立川市「改葬承諾書」墓地使用者の住所・氏名(押印)/遺骨のある死亡者の氏名/改葬申請者の住所・氏名・墓地使用者との関係
稲沢市「改葬承諾書」墓地等の使用者の住所・氏名・電話番号/改葬許可申請者の住所・氏名・電話番号・使用者との関係/改葬する死亡者の氏名
高岡市「改葬承諾書」承諾者(墓地使用者又は焼骨収蔵委託者)の住所・氏名・電話番号/改葬許可申請者の住所・氏名・承諾者との関係/遺骨の死亡者の住所・氏名・現在の墓地・納骨堂
品川区「改葬許可証交付申請書・許可証」独立した承諾書ではなく、申請書の中に承諾の欄がある一体様式。「上記のとおり改葬を承諾いたします」の文言と、日付・墓地使用者の氏名(押印)・住所・電話番号

並べてみると、組み立ては似ています。日付、宛先(市区長)、承諾する人(墓地使用者)の住所・氏名、申請する人の住所・氏名と使用者との関係、改葬する死亡者の氏名、いまの墓地の名称や所在地。稲沢市の様式には、施行規則第2条第2項第2号の規定により承諾する、と根拠条文まで印字されています。

もうひとつ。確認した様式では、署名や押印をするのはいずれも墓地使用者で、きょうだいや親族が並んで署名する欄は見当たりませんでした。承諾書は、名義人ひとりが書く書面という作りです。様式は自治体ごとに違い、使う様式の指定がある場合もあるため、実際に出すときはお墓のある市区町村の公式ページで最新の様式を確かめてください。当サイトでは、承諾書の文面の作成や記入の代行は行っていません。

親族の同意の取り方

法律の必須事項でなくても、取っておきたい理由があります。親族間のこじれは、判断の中身より「知らされていなかった」という経緯から起きることが少なくないからです。同意を「もらう」というより、同じ情報を渡して反応を聞く、と考えると進めやすくなります。

声をかける範囲は、法律ではなく家族の事情で決まります。目安になるのは、次のような人です。

  • お墓を継ぐ可能性のある直系の親族(きょうだい・甥姪など)
  • これまで管理費や年会費を実際に払ってきた人
  • お墓参りを続けてきた人。法的な権利者でなくても、心情の関わりは深い
  • 遠方で、連絡が後回しになりやすい親族

進め方は4つの段階に分けられます。まず、決まっている事実(名義人は誰か、いまの墓地はどこか、費用の目安)と、検討している選択肢を、同じ紙かメッセージで全員に同時に渡す。次に、決まっていないことを、決まっていないと書く。三つめに、意見を聞く期間を決める。「いつまでに、どの方法で返事がほしいか」が分かるだけで、無言のまま進んだという感覚は減ります。最後に、出た意見と結論を、記録として残す。

集まって話す段階になったら家族会議の進め方を、最初の切り出しに迷うなら切り出し方の記事を、全員に同じ紙を渡したいなら説明資料テンプレートを使えます。

費用の分担は、同意とは別に話す

「墓じまいに賛成」と「費用を持つ」は、別の話です。賛成した人が当然に払うわけでも、払わない人が反対とは限りません。ここを一緒くたにすると、金額の話が出た瞬間に、賛成だった人まで身構えます。

費用の負担者を直接定めた条文は、当サイトが確認した範囲ではありません。民法897条が定めているのは、祭祀財産の所有権の承継であって、費用負担ではないのです。実際に見られる型は大きく3つ。

費用を誰が持つか——実際に見られる3つの型
型考え方
① お墓を承継した人が持つ所有権が承継者にある以上、処分の費用も承継者が持つ、という実務上の見方。明文規定ではない
② きょうだい・親族で分担する均等割、承継者が多めに持つ、一時費用は分担して維持費は承継者が持つ、など
③ これから供養を担う人が持つ新しい供養先の契約者になる人が、費用も持つ

どれが正解という構図ではありません。3つの型の根拠と、民法897条の原文は墓じまいの費用は誰が払う?で整理しています。

話す順番で、落ち着き方が変わります。先に金額の目安を共有し、そのあとで分け方を話す。総額が見えない段階で「払える・払えない」を議論すると、不安と不安がぶつかります。目安は墓じまいの費用相場と内訳で、2026年1月の鎌倉新書の調査(n=733)では「31万〜70万円」が最多でした。ただし新しい供養先に一般墓を選ぶと数百万円に届くこともあり、どこへ移すかで総額は大きく変わります。家族の条件をあてはめた試算は費用シミュレーターで出せます。

費用について書面に残すなら、金額そのものより、次のような「決め方」の側が食い違いを防ぎます。

  • どの型でいくか(承継者が持つ・分担・供養を担う人が持つ)
  • 分担するなら、どの費用が対象か(撤去・儀式・手続き・新しい供養先)と、割合の決め方
  • 最初に立て替える人は誰か、いつまでに精算するか
  • 見積もりより増えたときの扱い(誰に連絡し、どう決めるか)
  • 新しい供養先の契約者は誰で、その後の年会費・管理費は誰が持つか

家族の同意書に書いておきたい項目

家族間の同意書には、法律で定められた書式がありません。ここまでに見た自治体の承諾書様式は、名義人が書く法定の添付書類であって、家族の同意書の公式な雛形ではないことを、先に断っておきます。以下は2つに分けて挙げます。

①自治体の承諾書様式から読み取れる項目。日付/宛先(承諾書なら市区長。家族間なら家族全員)/承諾・同意する人の住所・氏名・押印/お墓の特定情報(墓地の名称または所在地)/改葬する死亡者の氏名/手続きを進める人の住所・氏名と、承諾する人との関係。

②家族間で食い違いやすい項目。こちらは公式の様式があるわけではなく、当サイトで考えられる範囲を整理したものです。何に同意しているのか(墓じまいをすること、改葬先、時期のどこまでか)/まだ決まっていないこと/費用についての決め方(前節の5点)/新しい供養先の契約者・管理者/意見を聞いた日と、返事をもらった方法。

形式に決まりはなく、便箋でもメールでも構いません。ひとつだけ、「墓じまいに賛成」の一文で済ませると、のちに「どこまで同意したのか」で見解が分かれる余地が残ります。何に、どこまで、というところだけは具体的に。家族間の書面が個別の事情でどう扱われるかは、当サイトでは判断できません。文面の作成や、署名をもらうためのやり取りの代行も行っていません。

同意が得られない・連絡がつかないとき

制度の面では、名義人の承諾(または裁判の謄本)が揃えば、改葬許可の申請は成り立ちます。反対する親族がいても、書類のうえでは申請が止まるわけではありません。ただ、対立を抱えたまま実行すると、遺骨を移したあとで争いになる余地が残ります。急ぐ理由が本当にないなら、返事を待つ時間を持てることも多いものです。

連絡がつかない親族には、結論から入らず、近況を尋ねる連絡を先に置く、という進め方があります。承継や名義そのものに深刻な争いがあり、当事者間では動かせないときは、弁護士など法律の専門家に相談するという一般的な選択肢があります。強く反対する人への説得や交渉の助言は、当サイトでは行いません。

よくある質問

回答は法令の条文と、自治体が公開している様式の範囲で書いています。個別の権利関係の判断は、資格のある専門家か公的な相談窓口にご確認ください。

墓じまいに、きょうだい全員の同意書は必要ですか?

法律上は必要ありません。改葬許可の申請に添える書類として施行規則第2条が定めているのは、お墓の管理者による埋葬等の証明、申請者が墓地使用者でないときの承諾書(または裁判の謄本)、市町村長が特に必要と認める書類です。きょうだいの同意書は、そこに出てきません。ただし、書類が揃うことと家族が納得していることは別の話なので、実行の前に同じ情報を全員へ渡しておくほうが、後のこじれは避けやすくなります。

承諾書と同意書は、同じものですか?

別のものです。承諾書は、申請者が墓地使用者(名義人)本人でないときに、名義人が書いて改葬許可の申請に添える書類で、施行規則に根拠があります。多くの自治体が様式を公開しています。同意書は、家族の間で「墓じまいをすること」への賛成を残すための書面で、決まった書式も、役所への提出義務もありません。城陽市のように、承諾書の見出しに「改葬同意書」と添える自治体もあるため、申請先の様式の見出しを確かめてください。

親が名義人で、子の自分が申請します。誰が承諾書を書きますか?

名義人である親が書きます。申請者が墓地使用者本人なら承諾書は要らず、子が申請者になるときに、名義人の承諾書を添える形です。窓口に行けないだけなら、申請者を名義人のままにして子が提出を担う方法もあり、その場合は委任状の話になります。どちらの形になるかは自治体の運用で変わるため、お墓のある市区町村の窓口で確かめるのが確実です。

きょうだいの一人が反対しています。墓じまいはできませんか?

制度の面では、名義人の承諾があれば改葬許可の申請は成り立ちます。反対している人の同意書は、法定の添付書類ではありません。ただ、対立を残したまま進めると、あとで別の争いに発展する余地は残ります。説得や交渉についての助言は当サイトでは行っておらず、承継や名義に深刻な争いがあるときは、弁護士など法律の専門家に相談するという選択肢があります。

費用を払わないと言うきょうだいがいます。どうすればよいですか?

費用の負担者を直接定めた法律の条文は、当サイトが確認した範囲ではありません。民法897条が定めているのは、お墓の所有権を誰が承継するかです。分担は家族の合意で決める領域で、割合の決まりもなく、家庭裁判所が割合を決める制度もありません。見積もりが出る前の段階で割合を詰めるより、総額の目安を共有してから話すほうが落ち着きます。深刻な対立があるときは、弁護士など専門家への相談という選択肢があります。

次の一歩

今日できることは、3つあります。お墓の名義人が誰になっているかを確かめる。実際に管理費を払ってきた人と、これから動く人を挙げてみる。金額の目安を見てから、同意と分担の話に進む。順番は、この通りでなくても構いません。

話し合いの場をつくる段階なら家族会議の進め方へ。急がないという選び方もあり、「様子見」という結論も同格です。確認したい項目の整理や公式情報の探し方で迷うときは、無料相談フォームからお知らせください。個別の法律判断や交渉の代理は行っていません。

大久保亮佑

執筆・編集

大久保亮佑株式会社Kogera代表

生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)

墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。

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