墓じまいの費用は誰が払う?祭祀承継者・兄弟の分担と民法897条

大久保亮佑

執筆・編集: 大久保亮佑株式会社Kogera代表生前整理アドバイザー2級

更新日: 2026年9月2日

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墓じまいの費用は誰が払う?祭祀承継者・兄弟の分担と民法897条|記事の要点を1枚にまとめた図版

墓じまいの費用を誰が払うか。この問いに直接答える法律の条文はありません。民法897条が定めているのは「お墓の所有権を誰が承継するか」であって、「費用を誰が払うか」ではないのです。

長男だから。お墓を継いだから。実家の近くに住んでいるから。それぞれの立場に、それぞれの言い分があります。条文の原文と、家族で分担を決めるときの考え方、分ける前に知っておきたい金額の目安を整理します。

結論: 法律に「誰が払う」の明文はない(3つの型)

先に結論を。墓じまい(改葬)の費用を誰が負担するかを直接定めた条文は、当サイトが確認した範囲では存在しません。よく引き合いに出される民法897条が定めているのは、祭祀財産(お墓・仏壇・家系図など)の所有権を誰が承継するか費用を誰が払うかを命じる条文ではないのです。

ですから実際の決め方は、おおよそ3つに分かれます。どれかが法律上「正しい」わけではなく、家族の事情に応じた合意で決まっているのが実情です。

墓じまいの費用を誰が払うか——実際に見られる3つの型
考え方法律上の位置づけ
① お墓を承継した人(祭祀承継者)が持つ所有権が承継者に帰属する以上、管理・処分の費用も承継者が負担する、という実務上の見解解釈・見解であり、明文規定ではない
② 兄弟姉妹・親族で分担する均等割、承継者が多めに持つ、一時費用は分担し維持費は承継者が持つ、など合意で決める。法的な割合の定めはない
③ これから供養を主に担う人が持つ新しい供養先の契約者・名義人になる人が費用も持つ同上

法的な土台: 民法897条の原文

唯一の法的な土台である民法897条(祭祀に関する権利の承継)を、原文で見てみます。

第1項「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」

第2項「前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。」

読み取れることは3つ。まず、お墓は通常の相続財産とは別枠で、慣習→故人の指定→家庭裁判所の順に、「祭祀を主宰すべき者」ひとりへ承継されます。次に、承継されるのは「所有権」であって、費用負担の義務ではありません。そして、承継者は長男に限られません。条文に続柄の指定はないのです。「うちは長男が継ぐもの」という感覚は慣習として根強くありますが、法律上の決まりではありません。改葬(お墓の引っ越し)そのものの法律上の定義は改葬とはで整理しています。

実務では「祭祀承継者が負担」とされることが多い

一方、法律実務の解説では「お墓の所有権が祭祀承継者に帰属する以上、その管理・処分にかかる費用も承継者が負担するのが原則」と説明されることが多くあります。筋は通っています。ただ、これは解釈・見解であり、法令の明文規定ではありません。当サイトが法テラス・国民生活センターなど公的機関の公開情報を確認した範囲でも、「祭祀承継者に費用負担の法的義務がある」と明記した公的文書は見つかりませんでした。裁判所の公式判例検索でも、墓じまい費用の負担に固有の判例は確認できていません。

「祭祀承継者が払うべき」も「みんなで分担すべき」も、法的にどちらかが正解という構図ではないのです。この前提を家族で共有できると、話の質が変わります。「誰が正しいか」の言い合いから、「どう分けるのが現実的か」の相談へ。

分担の前に: 費用はいくらかかるか(出典つき)

分け方を話す前に、分ける対象の大きさを知っておきます。鎌倉新書の「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」(2026年1月、n=733)では、費用は「31万〜70万円」が最多で、約半数が70万円以下で完了しています。墓じまいパートナーズの2026年3月調査(経験者n=52)では、大変だったことの3位に「親族との話し合い」(17.3%)が入り、「費用」(13.5%)を上回りました。

墓じまいの費用の内訳と目安(分担の対象になる項目)
項目目安出典
墓石の撤去工事(一時費用)1㎡あたり8万〜15万円。約2㎡で24万円前後城戸石材加工所ほか石材店公表価格
閉眼供養のお布施(一時費用)3万〜10万円。寺院墓地では離檀料が加わることがある(公式な相場はない)ご遺骨サポートこころ
改葬許可証の手数料(一時費用)無料が105件、有料が35件(200600円)当サイト実査348自治体
新しい供養先(一時費用+契約によっては年間管理費)合祀墓1体3万円台から一般墓300万円まで、種類で10倍以上の差費用相場の記事(出典つき)

一時費用と、年ごとに続く費用(納骨堂などの年間管理費)は、分担の仕方が変わりやすい項目です。区分ごとの詳しい目安は墓じまいの費用相場に、自治体ごとの手数料と窓口は改葬許可(自治体別)データベースにまとめています。

兄弟姉妹で分担を決めるときの考え方

話し合いは、順番が大切です。金額を見えるようにしてから、分け方を話す。総額が分からないまま「払える・払えない」を議論すると、不安どうしがぶつかります。当サイトの費用シミュレーターは、墓地の種類・面積・改葬先など3つの質問で総額と内訳の目安を出せます(登録不要)。

分け方の実例はいくつかあります。兄弟姉妹で同額ずつの均等割。承継者が多めに持って残りを分担する形。墓石撤去などの一時費用は分担し、新しい供養先の年会費・管理費は承継者が持つ、という組み合わせ。お墓参りの頻度や、これまで誰が管理料を払ってきたかという経緯も、判断材料になります。ここでも「こう分けるべき」という正解はありません。結論を急がないことが、最終的な納得感につながります(その進め方は切り出し方の記事で整理しました)。

ひとつ気をつけたいのは、費用を出す人と、祭祀を主宰する人(承継者)がずれる場合です。「費用は兄弟で分担したが、改葬許可の申請名義や新しい供養先の契約者は長女」。実務ではよくある形です。契約者・名義人が誰になるかは、後々の管理や解約にも関わります。分担額と同じタイミングで決めておくと、行き違いを防げます。

まとまらない場合・払えない場合

話し合いがまとまらないとき、民法897条2項には「祭祀承継者を家庭裁判所が定める」手続きがあります。ただしこれは承継者を決めるためのもので、費用の分担割合を決めてくれる制度ではありません。分担そのものに深刻な対立があるなら、弁護士など法律の専門家に相談するという選択肢があります(当サイトは個別の法律相談には応じられません)。

「分担してもなお重い」という場合は、費用自体を下げる方向も考えられます。総額の中で大きく動くのは墓石撤去費と新しい供養先の費用。選び方によって数十万円単位で変わります。払えないときの選択肢の記事では、「今はしない・様子見」も含めて整理しました。補助金は市営墓地の使用者に限った制度が一部にあるだけで、補助金の記事で公式に確認できたものだけを載せています。

よくある質問

回答は一般的な情報です。個別の事情についての法律判断は、弁護士など法律の専門家にご相談ください。

墓じまいの費用は誰が払うのですか?

費用の負担者を直接定めた法律の条文はありません。民法897条が定めているのはお墓(祭祀財産)の所有権を誰が承継するかで、費用の負担ではありません。実務ではお墓を承継した人(祭祀承継者)が負担する形が多い一方、兄弟姉妹で分担する家庭、これから供養を主に担う人が持つ家庭もあり、どれが法律上正しいというものではありません。

長男が墓じまいの費用を払う義務はありますか?

法律上の義務はありません。民法897条は、祭祀財産を「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継すると定めていますが、続柄の指定はなく、長男に限られません。承継されるのも所有権であって、費用負担の義務ではありません。「長男が払うもの」という感覚は慣習として根強くありますが、法律の決まりではありません。

兄弟で墓じまいの費用を分担するとき、割合はどう決めますか?

決まった割合はありません。実例としては、兄弟姉妹で同額ずつの均等割、承継者が多めに持って残りを分担する形、墓石撤去などの一時費用は分担し新しい供養先の年会費・管理費は承継者が持つ組み合わせなどがあります。お墓参りの頻度や、これまで誰が管理料を払ってきたかという経緯も判断材料になります。まず総額を見えるようにしてから分け方を話すのが順序です。

分担する前に、墓じまいの費用はいくらかかると見ておけばよいですか?

鎌倉新書の2026年1月の実態調査(n=733)では、墓じまいの費用は「31万〜70万円」が最多、約半数が70万円以下でした。内訳は、墓石の撤去工事(1㎡あたり8万〜15万円)、閉眼供養のお布施(3万〜10万円)、改葬許可証の手数料(当サイト実査348自治体の判明分は無料〜600円)、新しい供養先(3万円台〜300万円)の4つです。

話し合いがまとまらない場合はどうなりますか?

民法897条2項には「祭祀承継者を家庭裁判所が定める」手続きがありますが、これは承継者を決めるためのもので、費用の分担割合を決めてくれる制度ではありません。分担そのものに深刻な対立があるなら、弁護士など法律の専門家に相談するという選択肢があります。当サイトは個別の法律相談には応じられません。

次の一歩: 金額を見えるようにしてから話す

「誰が払うか」は、金額が見えないうちは感情の問題です。金額が見えた瞬間、計算の問題に変わります。まずは費用シミュレーターでご自身のケースの総額目安を確認して、それを持って家族の前に座ってください。誰か一人が抱え込む前提ではなく、「この金額を、うちの家族はどう分けるのが現実的か」から始める。遠回りに見えて、いちばん確かな道です。

家族に見せる資料の整え方や、確認しておくべき項目に迷ったら無料相談フォームからお知らせください。当サイトは分担の仲裁や法律判断は行いませんが、金額の見える化と公式情報の探し方はお手伝いできます。

分担する金額そのものを下げるなら、いちばん大きい墓石撤去費を複数の石材店の見積もりで比べる方法があります。家族に示す根拠にもなります(以下は広告リンクです)。
全国の優良石材店から一括見積りが無料で出来る【墓石ナビ】比べられるもの: 複数の石材店から届く墓石撤去の見積もり(金額と内訳)を、同じ条件で並べて比較できます費用: 見積もりの依頼は無料です。依頼した石材店と契約する義務はありません依頼後に起きること: 入力した電話番号・メールアドレスに確認の連絡が入ります。この連絡に応じてはじめて見積もりが進みます無料で見積もりを依頼する(確認の連絡あり)外部サイト(墓石ナビ)に移動します。

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大久保亮佑

執筆・編集

大久保亮佑株式会社Kogera代表

生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)

墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。

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