墓じまいとは|意味・改葬との違い・費用と手続きの流れをやさしく整理
執筆・編集: 大久保亮佑(株式会社Kogera代表/生前整理アドバイザー2級)
更新日: 2026年9月2日

墓じまいとは、いまあるお墓の墓石を撤去して墓地を返し、遺骨を別の供養先へ移すことです。「片づける」「たたむ」という響きが先に立ちますが、実際にしているのは移すこと。弔うことをやめるわけではありません。
厚生労働省の統計では、改葬(お墓の引っ越し)の件数は2024年度に176,105件。10年前の83,574件から2倍あまりに増えました(遺骨数ベースの集計で、墓じまいをしたお墓の基数ではありません)。同じ状況に立っている家庭は、思っているよりずっと多くあります。
総額の目安
30万円 〜 300万円
はせがわ・お墓ガイドなど個別サイトが紹介する目安のレンジです(統計調査ではなく参考情報)。供養先を一般墓に移す場合は300万円を超えることもあります。詳しい内訳は費用相場の記事でご確認ください。
- 撤去工事(墓石の解体・処分)
- 24万円〜72万円が目安
- 供養儀式(閉眼供養・離檀料)
- 3万円〜30万円(寺院墓地の場合)
- 行政手続き(改葬許可等)
- 無料〜数千円
- 新しい供養先
- 3万円〜300万円(種類による)
墓じまいとは何をすること?(意味と法律上の位置づけ)
墓じまいとは、いまあるお墓の墓石を撤去して墓地を管理者に返し、取り出した遺骨を別の供養先へ移すことです。取り出した遺骨は、永代供養墓や納骨堂、樹木葬といった場所に移されるのが一般的で、弔い方が変わるだけ。弔うことをやめるわけではありません。何をするのかが分かると、後ろめたさの正体は「分からないこと」への不安だったと気づく方が少なくありません。
「墓じまい」は法律用語ではなく日常語です。法律にあるのは「改葬」という言葉で、墓地、埋葬等に関する法律 第2条第3項が、埋蔵・収蔵した焼骨を「他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定義しています。つまり、墓じまいのうち遺骨を移す部分が改葬です。墓石の撤去や墓地の返還は、法律上の改葬には含まれず、墓地の管理者との契約上の手続きになります。
改葬には、いまお墓がある市区町村長の許可が要ります(同法 第5条)。許可を受けると改葬許可証が交付され、新しい納骨先はこれを受理してから納骨します(第8条・第14条)。ここが、家族の話し合いだけでは完結しない、墓じまいの唯一の「役所の手続き」です。改葬という言葉の詳しい定義は改葬とはで整理しています。
実際にすることは4つ
墓じまいで実際に行うことを、相手ごとに分けると4つになります。
| すること | 相手 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 遺骨を別の供養先へ移す(改葬) | いまお墓がある市区町村(改葬許可) | 法律上の手続き。許可証が要る |
| 閉眼供養をして、遺骨を取り出す | 寺院(宗派・地域により呼び方が異なる) | 宗教上の儀式。寺院墓地では離檀の話し合いを伴う |
| 墓石を撤去して、区画を更地に戻す | 石材店(霊園の指定業者がある場合も) | 工事。費用が最も動く部分 |
| 墓地の使用権を返す | いまの墓地の管理者(寺院・霊園・自治体) | 契約上の手続き。返還届などの書式は管理者ごと |
このうち費用が大きく動くのは墓石の撤去と新しい供養先で、行政手続きの費用は小さい。時間がかかるのは書類ではなく、家族と寺院との話し合いのほうです。この構図を先に知っておくと、何から手を付けるかが見えてきます。
なぜ今、考える人が増えているのか(厚生労働省の統計)
厚生労働省の衛生行政報告例によると、全国の改葬件数は2014年度の83,574件から、2022年度151,076件、2023年度166,886件、2024年度176,105件へと増えています。10年で2倍あまり。ただしこの数字は遺骨数ベース(移した遺骨の数)で、墓じまいをしたお墓の基数ではありません。1つのお墓から複数の遺骨を移せば、その分だけ件数が増えます。
遠くて墓参りに行けない。継ぐ人がいない。家族で意見が分かれている。きっかけは家庭ごとに違いますが、どれも特別な事情ではありません。終活協議会の調査(2026年6月、n=860)では、61.1%が「自分の代で墓を終わらせてよい」という考えに共感する一方、88.6%は費用を「具体的に知らない」と答えています。考える人は増えているのに、判断の材料はまだ手元にない。多くの方が、いまそこに立っています。
費用の目安と、行政手数料の実情
総額の目安は、冒頭のカードのとおり30万円〜300万円。この幅は、新しい供養先の種類(合祀墓なら数万円、一般墓への引っ越しなら100万円超)と、墓石撤去の条件(面積・重機が入るか)で決まります。実際に払った人の分布としては、鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまい実態調査」(2026年、n=733)で「31万〜70万円」が最多、約半数が70万円以下で完了しています。同じ調査では、墓じまいを中止した理由の1位が「費用の高さ」、実施した人の課題として「引っ越し先選び」と「役所の手続き」が挙がっていました。
役所の手続きの費用そのものは小さい。改葬許可証の手数料は自治体が条例で決めており、当サイトが自治体公式サイトを実査した149自治体(45都道府県)では、「無料」と明記していたのが44件、有料が9件(1件あたり300円〜600円)、公式サイトに記載がないものが96件でした。郵送で申請できる自治体も86件あります。ただし手数料・必要書類・郵送可否は自治体ごとに違うので、自治体別データベースで、お墓がある市区町村の公式情報(出典・確認日つき)をご確認ください。
内訳と総額の考え方は費用相場の記事に、ご自身の条件を入れて幅を確かめるなら費用シミュレーターをどうぞ。なお離檀料には公式な相場が存在しません。当サイトは「相場は○円」という断定を書かない方針です。
手続きの流れ(6ステップの要約)
墓じまいは、次の6つの順で進みます。順序が前後すると書類が埋まらない箇所があるので、流れとして頭に入れておくと安心です。
- 家族・親族と話し合う……最初の一歩は書類ではありません。ここで合意ができていないと後の工程はすべて止まります。
- 遺骨の行き先(改葬先)を決める……改葬許可申請書には「改葬の場所」を書く欄があり、行き先が決まらないうちは書類が完成しません。
- いまの墓地の管理者に伝え、埋蔵証明書をもらう……法定の添付書類。寺院墓地なら、この依頼が墓じまいの意思を伝える場面になります。
- 市区町村へ改葬許可を申請する……申請先はいまお墓がある市区町村。遺骨1体ごとに出します。
- 閉眼供養・遺骨の取り出し・墓石の撤去……許可証が手元に届いてから。石材店が墓石を撤去し、区画を更地に戻します。
- 新しい供養先へ納骨する……改葬許可証を新しい供養先の管理者に渡します。
各ステップで誰と何をするか、順序を間違えやすい点、期間の考え方は墓じまいの流れと手順で詳しく整理しています。
「しない」「様子を見る」も同じ重さの結論
墓じまいは義務ではありません。お墓をいまのまま維持し続けること自体に罰則はなく、「する」「しない」「いまは様子を見る」の3つに優劣はありません。管理する人がいなくなったお墓を管理者が改葬するにも、官報への掲載と立札の1年間の掲示が施行規則で定められており、連絡が取れないまま突然撤去される仕組みにはなっていません。制度上の事実は墓じまいをしないとどうなるかで条文にもとづいて整理しています。
考え始めたからといって、結論を急ぐ必要はありません。制度を知り、費用の幅を知り、家族と話す。その過程で「今回はやめておく」「時期を改める」となることもあります。それは失敗ではなく、家族で話し合って出た同じ重さの結論です。
よくある質問
回答中の改葬件数は厚生労働省 衛生行政報告例(遺骨数ベース)、自治体の件数は当サイトが公式サイトを実査した149自治体(45都道府県)のデータからの集計です。
墓じまいとは何ですか?
いまあるお墓の墓石を撤去して墓地を管理者に返し、取り出した遺骨を別の供養先(永代供養墓・納骨堂・樹木葬など)へ移すことです。お墓を「なくす」のではなく、供養の場所を移す行為で、遺骨を移す部分は法律上「改葬」と呼ばれ、市区町村長の許可が必要です(墓地、埋葬等に関する法律 第5条)。
墓じまいと改葬は同じ意味ですか?
重なりますが同じではありません。改葬は法律用語で、遺骨をいまのお墓・納骨堂から別のお墓・納骨堂へ移すことを指します(同法 第2条第3項)。墓じまいは日常語で、墓石の撤去・墓地の返還・閉眼供養・遺骨の移動という一連の流れ全体を指します。墓じまいの中に、遺骨を移す手続きとしての改葬が含まれる、という関係です。
墓じまいの費用はいくらかかりますか?
個別サイトが示す目安は総額30万円〜300万円と幅があります(統計ではなく参考情報)。鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまい実態調査」(2026年、n=733)では費用は「31万〜70万円」が最多で、約半数が70万円以下で完了しています。幅が出る主因は新しい供養先の種類と墓石撤去の条件で、行政手数料は当サイトが実査した149自治体で無料〜600円と、総額の中ではごく一部です。
墓じまいをしないとどうなりますか?
お墓をいまのまま維持し続けること自体に罰則はありません。墓じまいは義務ではなく、「する」「しない」「様子を見る」は対等な選択肢です。管理する人がいなくなったお墓(無縁墳墓等)を管理者が改葬するには、官報への掲載と立札の1年間の掲示が施行規則で定められており、連絡が取れないまま突然撤去される仕組みにはなっていません。
墓じまいは誰が決めて、誰が手続きしますか?
決めるのは家族・親族で、法律が「誰が」を定めているわけではありません。改葬許可の申請は、いまお墓がある市区町村に、墓地使用者本人か、その承諾を得た人が行います。申請者が墓地使用者本人でない場合は承諾書が法定の添付書類になります(施行規則 第2条)。寺院墓地なら、埋蔵証明書をお願いする場面が、そのまま墓じまいの意思を伝える場面になります。
最初の一歩をどう選ぶか
いきなり手続きに進む必要はありません。家族と話す、費用の目安を知る、自治体の窓口を確認する。この順に手をつけていくと、漠然とした迷いが、ひとつずつ具体的な確認事項に変わっていきます。
- 家族と話す……誰が、いつ、何を切り出すか。決めるのはそこからで十分です。切り出し方は家族への伝え方の記事に。
- 費用の目安を知る……出典つきのデータで、総額と内訳をつかみます。
- 自治体の窓口を確認する……改葬許可申請の窓口も必要書類も、自治体ごとに違います。
何から聞けばよいか分からない、家族への説明の仕方に悩んでいる。そんなときは無料相談フォームからお知らせください。申請の代理や書類作成の代行は行いませんが、確認すべき項目の整理と公式情報の探し方はお手伝いできます。
参照元
- 墓地、埋葬等に関する法律(e-Gov法令検索)第2条・第5条・第8条・第14条〔2026年9月2日〕
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)第2条・第3条〔2026年9月2日〕
- 厚生労働省 令和6(2024)年度 衛生行政報告例の概況〔2026年9月2日〕
- 厚生労働省 衛生行政報告例(政府統計の総合窓口 e-Stat)改葬件数〔2026年9月2日〕
- 鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまい実態調査」(2026年、n=733)〔2026年9月2日〕
- 終活協議会「墓じまいと供養先の再選択に関する実態調査」(2026年6月、n=860)〔2026年9月2日〕
- はせがわ 墓じまいの費用(総額の目安30万〜300万円)〔2026年7月14日〕
- お墓ガイド 改葬にかかる費用(供養先別の目安)〔2026年7月14日〕
- 当サイト 改葬許可(自治体別)データベース(149自治体・45都道府県を実査)〔2026年9月2日〕

執筆・編集
大久保亮佑株式会社Kogera代表
生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)
墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。