分骨の手続き|改葬との違い・分骨証明書の位置づけ・改葬許可が不要な理由
執筆・編集: 大久保亮佑(株式会社Kogera代表/生前整理アドバイザー2級)
更新日: 2026年9月8日
きょうだいで遠く離れて暮らしている。墓じまいをしたあと、遺骨の一部だけは手元に置いておきたい。分骨を考えはじめると、まず「役所で何をもらうのか」が分かりません。
結論から書くと、分骨に市区町村長の改葬許可は要りません。改葬とは別の手続きで、必要になるのは墓地・納骨堂の管理者、または火葬場の管理者が出す証明書です。これは墓地埋葬法の施行規則第5条に定めがあります。当サイトが実査した690自治体の改葬案内のうち、分骨に触れていたのは73件でした。
この記事の要点(法令の条文と、当サイト実査690自治体の公式文言)
| 改葬許可 | 不要。分骨は施行規則第5条で「管理者の証明書」の手続きとして定められている |
|---|---|
| 誰からもらう | いま遺骨がある墓地・納骨堂の管理者。火葬のときに分けるなら火葬場の管理者(同条第3項) |
| 誰に出す | 分けた遺骨を納める先の管理者(同条第2項)。手元供養なら提出先はないが、将来のために保管する |
| 費用 | 管理者が定める。実査で確認できた例は下関市「分骨証明書 手数料300円」。改葬許可証の手数料とは別 |
| 自治体の案内 | 改葬案内で分骨に触れていたのは 73件(690自治体中)。品川区・松戸市・寝屋川市は改葬許可(市区町村の証明)が不要と明記 |
分骨と改葬は、別の手続き
遺骨をいまのお墓から別の場所へ移すことを改葬といい、お墓のある市区町村長の許可が要ります(墓地、埋葬等に関する法律 第5条)。これに対して分骨は、遺骨の一部を分けて別の場所に納めること。法律は改葬の許可について定める一方、分骨は施行規則第5条で管理者の証明書のやりとりとして扱っており、市区町村長の許可という仕組みを置いていません。
この違いは、自治体の案内ページにもはっきり書かれています。寝屋川市は、焼骨の一部を移す場合(分骨)は改葬に該当せず、墓地・納骨堂の管理者が発行する埋蔵・収蔵証明書を新たな管理者に提出する扱いになる、と案内しています(2026年7月29日確認)。吹田市の改葬案内にも、改葬と分骨は手続きが異なる点に注意との記載がありました(2026年8月1日確認)。品川区は「分骨(遺骨の一部を他の墓地等に移す)は墓地管理者の証明書で分骨先の手続きができ、改葬許可は不要」(2026年9月2日確認)、松戸市の公式FAQは「分骨については市区町村の証明は必要ありません」(2026年9月3日確認)と、いずれも同じ結論です。
つまり、分骨のために役所へ申請書を出す場面は、原則としてありません。窓口になるのは、いまお骨が納められている墓地・納骨堂の管理者です。ここを取り違えると、市役所に行って「うちではありません」と言われることになります。
法令が決めていること・管理者と自治体の運用
「分骨」という言葉は法令にありますが、「分骨証明書」という書類名はありません。何が全国共通で、何が管理者や自治体ごとの運用なのかを分けておくと、案内文が読みやすくなります。
| 項目 | 法令が定めていること(全国共通) | 管理者・自治体の運用(確認して決まること) |
|---|---|---|
| 許可の要否 | 改葬には市町村長の許可(法 第5条)。分骨には許可の規定がない | 改葬許可の案内ページで分骨に触れていたのは実査690自治体中73件。多くの自治体は改葬案内の中で分骨に言及していない |
| 証明書を出す人 | 墓地・納骨堂の管理者。請求があったときは交付しなければならない(施行規則 第5条第1項)。火葬場の管理者にも準用(同条第3項) | 様式・発行にかかる日数・手数料は管理者が定める。公営墓地では自治体が発行者になる(下関市「分骨証明書 手数料300円」) |
| 証明書を受け取る人 | 分骨を埋蔵・収蔵しようとする者は、納める先の管理者に提出しなければならない(同条第2項) | 手元供養なら提出先はない。骨壺の大きさ・粉骨の要否など受け入れ条件は納める先の施設が定める |
| 自宅供養・散骨との関係 | 墓地・納骨堂以外へ持ち出す場合の扱いは法令に明文がない | 改葬案内で自宅供養・散骨に触れていたのは20件。尼崎市は「分骨・自宅供養等の場合は要相談」、静岡市は「自宅への引取や散骨は手続きが異なるため現墓地の管理者へ相談」 |
分骨証明書とは何か
一般に「分骨証明書」と呼ばれている書類は、法令上そういう名前ではありません。施行規則第5条第1項は、墓地等の管理者に対し、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、またはその収蔵を委託しようとする者から請求があったときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を交付しなければならない、と定めています。同条第3項により、この規定は火葬場の管理者にも準用され、その場合は「火葬の事実を証する書類」と読み替えられます。
書類を出す義務があるのは、市区町村ではなく管理者側。しかも「請求があったときは交付しなければならない」という書き方です。分けてもらえるかどうかを管理者の裁量に委ねる規定ではありません。ここは知っておいて損のないところです。
受け取った書類をどうするか。第5条第2項が定めています。焼骨の分骨を埋蔵し、またはその収蔵を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、この書類を提出しなければならない。つまり証明書は、分けた側の管理者から受け取り、納める側の管理者へ渡すためのものです。手元に保管するための記念品ではなく、次の納骨先へ引き継ぐ通行手形に近い役割を持っています。
火葬のときと、埋葬したあとと
分骨のタイミングは、大きく2つに分かれます。ひとつは火葬のとき。この場合、証明書を出すのは火葬場の管理者です。あらかじめ分ける予定を葬儀社や火葬場に伝えておけば、収骨の場でそのまま対応してもらえます。骨壺を分ける数だけ、証明書も必要になるのが通常の運用です。火葬のときに関わる火葬許可証・埋葬許可証との関係は埋葬許可証とはで整理しています。
もうひとつが、すでにお墓や納骨堂に納めたあとで分ける場合。墓じまいをきっかけに分骨を考える方の多くは、こちらです。証明書を出すのは、いま遺骨が納められている墓地・納骨堂の管理者になります。
墓じまいと同時に分骨するなら、2つの手続きが並行します。遺骨の大半を新しい供養先へ移すのは改葬なので、市区町村長の改葬許可が要る。一部を手元や別の場所へ分けるのは分骨なので、管理者の証明書が要る。同じ日に、同じお墓から、性格の違う2つの手続きが動くわけです。
管理者ごとの窓口・手数料・郵送可否と、火葬のあとから証明書を発行してもらえるかは、分骨証明書は誰が発行するかに自治体の実例をまとめています。
埋葬後に分骨する場合の段取り
順序としては、まず墓地・納骨堂の管理者に分骨したい旨を伝えることから始まります。寺院墓地なら住職、公営霊園なら管理事務所、民営霊園なら管理会社。ここで証明書の発行を依頼します。発行手数料の有無や様式は管理者によって異なるため、あわせて確認しておくと二度手間になりません。
次に、納める側の準備。新しい納骨先が決まっているなら、その管理者に受け入れの可否と、証明書の提出方法を確かめます。手元供養として自宅に置くだけなら、提出する相手がいません。それでも証明書は受け取っておくことをおすすめします。将来、その遺骨をお墓や納骨堂に納めたくなったとき、証明書がないと受け入れてもらえない可能性があるためです。
実務面では、遺骨を取り出す作業が伴います。カロート(納骨室)の構造によっては、石材店に墓石を動かしてもらう必要があり、その費用が別にかかります。取り出しの前に閉眼供養を行う慣習もありますが、これは宗教上の作法であって法令上の義務ではありません。どうするかは、管理者や菩提寺と相談して決める部分です。
墓じまいと同時に進めるなら、改葬側の段取りはもうひとつ別に走ります。改葬許可申請書は遺骨1体ごとが基本で、分骨した「残り」をどう数えるかは自治体の様式によって扱いが分かれるため、申請前に窓口へ伝えておくと出し直しを避けられます。改葬側の順番は申請書の書き方(手戻りしない順番)で整理しています。
なお当サイトは、制度の一般的な解説と公式情報への案内を行うものです。書類作成の代行や記入指導は行いません。個別の事情に応じた扱いは、墓地・納骨堂の管理者と、必要に応じて自治体の窓口にご確認ください。
自治体の案内に見える運用の違い
当サイトの自治体データベースは改葬許可を対象に集めたもので、分骨手続きを網羅的に調べたものではありません。ですから「◯自治体が分骨に対応」といった集計値は、当サイトでは出しません。出せるのは、改葬許可の案内ページの中で分骨に触れていた自治体が690件中73件だった、という事実までです。裏を返せば、大半の自治体の改葬案内には分骨のことが書かれていません。書かれていないのは対応していないからではなく、分骨が市区町村の手続きではないからです。ここでは、その73件の記述をそのまま紹介します。
広島市は、分骨を他の墓地・納骨堂に移す場合には、現在その分骨が納められている墓地または納骨堂の管理者が交付する「埋蔵証明証」または「収蔵証明書」が必要と明記しています(2026年7月13日確認)。施行規則第5条の枠組みが、そのまま案内文になっている例です。
下関市の公式ページには「分骨証明書 手数料300円」という記載がありました(2026年7月13日確認)。これは改葬許可証そのものの手数料ではなく、別の手続きの費用です。宮崎市の市営墓地手続き一覧でも、定額小為替の同封が必要な手続きとして分骨証明等が挙げられています(2026年7月29日確認)。自治体が管理する墓地からの分骨では、自治体が証明書の発行者になり、手数料が発生することがある、ということです。
前橋市は、土葬された遺体の改葬や分骨など特殊なケースは個別に問い合わせが必要、と案内しています(2026年7月29日確認)。尼崎市の手引きも「土葬されている場合・分骨・自宅供養等の場合は要相談」(2026年9月2日確認)。運用は自治体・管理者によって異なります。ご自身のケースがどう扱われるかは、必ず窓口に確認してください。土葬されている場合に改葬許可のほかに火葬が加わる理由と順番は土葬骨の改葬の進め方で扱っています。
迷いやすい場面(手元供養・散骨・全部を移す)
手元供養にする。自宅に置くだけなら、証明書を提出する相手はいません。それでも受け取って保管しておく理由は、施行規則第5条第2項のとおり、将来どこかに納めるときの提出書類になるからです。改葬許可の案内ページで自宅供養・散骨に触れていた自治体は20件で、中央区は「散骨・手元供養の場合は不要なことが多いが事前確認を」と注記しています。
分けた遺骨を散骨する。区域や方法を条例で制限している自治体があるため、事前に確認が要ります。詳しくは散骨は違法?法規制の実際と、条例で規制する自治体を整理で扱っています。
「一部」ではなく全部を移す。それは分骨ではなく改葬です。品川区の案内が「分骨(遺骨の一部を他の墓地等に移す)」と括弧書きしているとおり、一部を分けるから許可が要らないのであって、骨壺ごと別の墓地・納骨堂へ移すなら改葬許可が要ります。境目に迷うときは、いまの墓地の管理者と、お墓のある市区町村の窓口の両方に、どれだけの量をどこへ移すのかを伝えて確かめてください。改葬許可証の役割は改葬許可証とはで整理しています。
気をつけたいこと
分骨をためらう気持ちを持つ方は少なくありません。故人を分けてしまうようで気が引ける、という声も聞きます。ただ、制度として見れば分骨は法令に手続きが用意されているもので、禁じられた行為ではありません。判断は家族の考え方次第です。当サイトは、分骨をすすめることも、やめるようすすめることもしません。
実務で注意したいのは3点。ひとつめは、証明書を必ず受け取っておくこと。手元供養のつもりでも、状況は変わります。ふたつめは、納める側の受け入れ条件を先に確かめること。施設によっては骨壺のサイズ指定があり、粉骨が必要になる場合があります。みっつめは、分骨したあとの遺骨を誰が引き継ぐかを家族で話しておくこと。分けた遺骨がそのまま、次の世代の悩みになることがあります。
よくある質問
回答中の件数は、当サイトが自治体公式サイトを実査した690自治体(47都道府県)の改葬許可の案内文からの集計です。分骨手続きそのものを網羅した調査ではありません。
分骨に改葬許可証は必要ですか?
要りません。改葬は「埋蔵した焼骨を他の墳墓又は納骨堂に移すこと」で市町村長の許可が要りますが(墓地、埋葬等に関する法律 第2条・第5条)、分骨は同法施行規則第5条で管理者の証明書のやりとりとして扱われ、市区町村長の許可という仕組みがありません。当サイトが実査した690自治体の改葬案内のうち分骨に触れていたのは73件で、品川区は「改葬許可は不要」、松戸市は「分骨については市区町村の証明は必要ありません」、寝屋川市は「改葬に該当せず」と案内しています。
分骨証明書はどこでもらえますか?
市区町村ではなく、管理者からです。すでにお墓や納骨堂に納めた遺骨を分けるなら、いま遺骨がある墓地・納骨堂の管理者(寺院・霊園の管理事務所・公営墓地なら自治体の担当課)。火葬のときに分けるなら、火葬場の管理者です(施行規則第5条第1項・第3項)。法令上の名前は「埋蔵又は収蔵の事実を証する書類」で、管理者は請求があったときは交付しなければならないと定められています。
分骨証明書に費用はかかりますか?
発行元の管理者が定めます。改葬許可証の手数料とは別の費用です。実査で確認できた例では、下関市の公式ページに「分骨証明書 手数料300円」の記載があり(2026年7月13日確認)、宮崎市の市営墓地手続き一覧では分骨証明等が定額小為替の同封を要する手続きに挙がっていました(2026年7月29日確認)。寺院・民営霊園の場合は、管理者に直接確かめてください。
手元供養にする分にも、分骨証明書は必要ですか?
自宅に置くだけなら、証明書を提出する相手はいません。それでも受け取っておくことをおすすめします。将来その遺骨をお墓や納骨堂に納めるとき、施行規則第5条第2項により納める側の管理者へ提出する書類だからです。証明書がないと受け入れてもらえない可能性があります。
墓じまいと同時に分骨する場合、手続きはどうなりますか?
2つの手続きが並行します。遺骨の大半を新しい供養先へ移す部分は改葬なので、いまお墓がある市区町村長の改葬許可が要ります。一部を手元や別の場所へ分ける部分は分骨なので、いまの墓地の管理者が出す証明書が要ります。同じ日に同じお墓から、性格の違う2つの書類が動くことになります。改葬側の書類は必要書類の記事で整理しています。
次の一歩:管理者と自治体に確認する
分骨で動く相手は、市区町村ではなく管理者です。まずは、いま遺骨が納められている墓地・納骨堂へ連絡する。証明書の発行方法と、費用がかかるかどうか。この2つを聞けば、次に何をすればよいかが見えてきます。
墓じまいと同時に進めるなら、改葬の手続きも並行します。改葬側で何を揃えるかは必要書類の一覧に整理しました。窓口が遠い場合は郵送での申請も選択肢に入ります。自治体別データベースでは、窓口となる部署と連絡先を、公式サイトの出典と確認日つきで公開しています。
分けた遺骨の納め先を選ぶ段階に進んだら、改葬先診断で条件から候補の型を出せます。
分けた遺骨を遠方の納め先へ送ることになったら、運送会社ごとの扱いや送り先が求める書類を遺骨の郵送の記事で確認できます。
参照元
- 墓地、埋葬等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)第5条〔2026年8月16日〕
- 墓地、埋葬等に関する法律(e-Gov法令検索)第2条・第5条・第8条〔2026年8月6日〕
- 寝屋川市 改葬許可の案内(焼骨の一部を移す場合は改葬に該当しないと明記)〔2026年7月29日〕
- 吹田市 改葬許可申請の案内(改葬と分骨は手続きが異なる旨の注記あり)〔2026年8月1日〕
- 品川区 改葬許可申請(分骨は墓地管理者の証明書で分骨先の手続きができ、改葬許可は不要と案内)〔2026年9月2日〕
- 松戸市 公式FAQ「お墓を移したい(改葬許可)」MAT00946(分骨については市区町村の証明は必要ありません)〔2026年9月3日〕
- 尼崎市 改葬許可申請の手引き(土葬・分骨・自宅供養等の場合は要相談)〔2026年9月2日〕
- 広島市 改葬に関するFAQ(分骨を他の墓地・納骨堂に移す場合に必要な証明書)〔2026年7月13日〕
- 下関市 改葬許可申請の案内(分骨証明書 手数料300円の記載)〔2026年7月13日〕
- 前橋市 改葬許可申請の案内(分骨など特殊なケースは個別問い合わせ)〔2026年7月29日〕
- 当サイト 改葬許可(自治体別)データベース(690自治体・47都道府県を実査)〔2026年9月2日〕
執筆・編集
大久保亮佑株式会社Kogera代表
生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)
墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。