分骨の手続き。改葬との違いと分骨証明書の位置づけ

大久保亮佑

執筆・編集: 大久保亮佑株式会社Kogera代表生前整理アドバイザー2級

更新日: 2026年8月16日

きょうだいで遠く離れて暮らしている。墓じまいをしたあと、遺骨の一部だけは手元に置いておきたい。分骨を考えはじめると、まず「役所で何をもらうのか」が分かりません。

結論から書くと、分骨に市区町村長の改葬許可は要りません。改葬とは別の手続きで、必要になるのは墓地・納骨堂の管理者、または火葬場の管理者が出す証明書です。これは墓地埋葬法の施行規則第5条に定めがあります。

分骨と改葬は、別の手続き

遺骨をいまのお墓から別の場所へ移すことを改葬といい、お墓のある市区町村長の許可が要ります(墓地、埋葬等に関する法律 第5条)。これに対して分骨は、遺骨の一部を分けて別の場所に納めること。法律は改葬の許可について定める一方、分骨は施行規則第5条で管理者の証明書のやりとりとして扱っており、市区町村長の許可という仕組みを置いていません。

この違いは、自治体の案内ページにもはっきり書かれています。寝屋川市は、焼骨の一部を移す場合(分骨)は改葬に該当せず、墓地・納骨堂の管理者が発行する埋蔵・収蔵証明書を新たな管理者に提出する扱いになる、と案内しています(2026年7月29日確認)。吹田市の改葬案内にも、改葬と分骨は手続きが異なる点に注意との記載がありました(2026年8月1日確認)。

つまり、分骨のために役所へ申請書を出す場面は、原則としてありません。窓口になるのは、いまお骨が納められている墓地・納骨堂の管理者です。ここを取り違えると、市役所に行って「うちではありません」と言われることになります。

分骨証明書とは何か

一般に「分骨証明書」と呼ばれている書類は、法令上そういう名前ではありません。施行規則第5条第1項は、墓地等の管理者に対し、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、またはその収蔵を委託しようとする者から請求があったときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を交付しなければならない、と定めています。同条第3項により、この規定は火葬場の管理者にも準用され、その場合は「火葬の事実を証する書類」と読み替えられます。

書類を出す義務があるのは、市区町村ではなく管理者側。しかも「請求があったときは交付しなければならない」という書き方です。分けてもらえるかどうかを管理者の裁量に委ねる規定ではありません。ここは知っておいて損のないところです。

受け取った書類をどうするか。第5条第2項が定めています。焼骨の分骨を埋蔵し、またはその収蔵を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、この書類を提出しなければならない。つまり証明書は、分けた側の管理者から受け取り、納める側の管理者へ渡すためのものです。手元に保管するための記念品ではなく、次の納骨先へ引き継ぐ通行手形に近い役割を持っています。

火葬のときと、埋葬したあとと

分骨のタイミングは、大きく2つに分かれます。ひとつは火葬のとき。この場合、証明書を出すのは火葬場の管理者です。あらかじめ分ける予定を葬儀社や火葬場に伝えておけば、収骨の場でそのまま対応してもらえます。骨壺を分ける数だけ、証明書も必要になるのが通常の運用です。

もうひとつが、すでにお墓や納骨堂に納めたあとで分ける場合。墓じまいをきっかけに分骨を考える方の多くは、こちらです。証明書を出すのは、いま遺骨が納められている墓地・納骨堂の管理者になります。

墓じまいと同時に分骨するなら、2つの手続きが並行します。遺骨の大半を新しい供養先へ移すのは改葬なので、市区町村長の改葬許可が要る。一部を手元や別の場所へ分けるのは分骨なので、管理者の証明書が要る。同じ日に、同じお墓から、性格の違う2つの手続きが動くわけです。

埋葬後に分骨する場合の段取り

順序としては、まず墓地・納骨堂の管理者に分骨したい旨を伝えることから始まります。寺院墓地なら住職、公営霊園なら管理事務所、民営霊園なら管理会社。ここで証明書の発行を依頼します。発行手数料の有無や様式は管理者によって異なるため、あわせて確認しておくと二度手間になりません。

次に、納める側の準備。新しい納骨先が決まっているなら、その管理者に受け入れの可否と、証明書の提出方法を確かめます。手元供養として自宅に置くだけなら、提出する相手がいません。それでも証明書は受け取っておくことをおすすめします。将来、その遺骨をお墓や納骨堂に納めたくなったとき、証明書がないと受け入れてもらえない可能性があるためです。

実務面では、遺骨を取り出す作業が伴います。カロート(納骨室)の構造によっては、石材店に墓石を動かしてもらう必要があり、その費用が別にかかります。取り出しの前に閉眼供養を行う慣習もありますが、これは宗教上の作法であって法令上の義務ではありません。どうするかは、管理者や菩提寺と相談して決める部分です。

なお当サイトは、制度の一般的な解説と公式情報への案内を行うものです。書類作成の代行や記入指導は行いません。個別の事情に応じた扱いは、墓地・納骨堂の管理者と、必要に応じて自治体の窓口にご確認ください。

自治体の案内に見える運用の違い

当サイトの自治体データベースは改葬許可を対象に集めたもので、分骨手続きを網羅的に調べたものではありません。ですから「◯自治体のうち◯件が分骨に対応」といった集計値は、当サイトでは出しません。ここでは、改葬の実査中に分骨への言及が確認できた自治体の記述を、そのまま紹介します。

広島市は、分骨を他の墓地・納骨堂に移す場合には、現在その分骨が納められている墓地または納骨堂の管理者が交付する「埋蔵証明証」または「収蔵証明書」が必要と明記しています(2026年7月13日確認)。施行規則第5条の枠組みが、そのまま案内文になっている例です。

下関市の公式ページには「分骨証明書 手数料300円」という記載がありました(2026年7月13日確認)。これは改葬許可証そのものの手数料ではなく、別の手続きの費用です。宮崎市の市営墓地手続き一覧でも、定額小為替の同封が必要な手続きとして分骨証明等が挙げられています(2026年7月29日確認)。自治体が管理する墓地からの分骨では、自治体が証明書の発行者になり、手数料が発生することがある、ということです。

前橋市は、土葬された遺体の改葬や分骨など特殊なケースは個別に問い合わせが必要、と案内しています(2026年7月29日確認)。運用は自治体・管理者によって異なります。ご自身のケースがどう扱われるかは、必ず窓口に確認してください。

気をつけたいこと

分骨をためらう気持ちを持つ方は少なくありません。故人を分けてしまうようで気が引ける、という声も聞きます。ただ、制度として見れば分骨は法令に手続きが用意されているもので、禁じられた行為ではありません。判断は家族の考え方次第です。当サイトは、分骨をすすめることも、やめるようすすめることもしません。

実務で注意したいのは3点。ひとつめは、証明書を必ず受け取っておくこと。手元供養のつもりでも、状況は変わります。ふたつめは、納める側の受け入れ条件を先に確かめること。施設によっては骨壺のサイズ指定があり、粉骨が必要になる場合があります。みっつめは、分骨したあとの遺骨を誰が引き継ぐかを家族で話しておくこと。分けた遺骨がそのまま、次の世代の悩みになることがあります。

分けた遺骨を海などにまくことを考えている場合は、事前に確認が要ります。区域や方法を条例で制限している自治体があるためです。詳しくは散骨は違法?法規制の実際と、条例で規制する自治体を整理で扱っています。

次の一歩:管理者と自治体に確認する

分骨で動く相手は、市区町村ではなく管理者です。まずは、いま遺骨が納められている墓地・納骨堂へ連絡する。証明書の発行方法と、費用がかかるかどうか。この2つを聞けば、次に何をすればよいかが見えてきます。

墓じまいと同時に進めるなら、改葬の手続きも並行します。改葬側で何を揃えるかは必要書類の一覧に整理しました。窓口が遠い場合は郵送での申請も選択肢に入ります。自治体別データベースでは、窓口となる部署と連絡先を、公式サイトの出典と確認日つきで公開しています。

大久保亮佑

執筆・編集

大久保亮佑株式会社Kogera代表

生前整理アドバイザー2級(一般社団法人生前整理普及協会、2026年5月取得)

墓じまい・改葬の費用と手続きを、自治体・省庁の一次情報や公的統計にあたって整理しています。掲載内容の企画・データ調査・編集の最終責任を負っています。

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